少年漫画の「制限」をぶち壊すニューカマー
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』『銀魂』はともに週刊少年ジャンプに掲載されていた作品だが、いまとある漫画がその「制限」をぶち壊し、新たな世界を切り開いている。それが、鈴木祐斗氏による『SAKAMOTO DAYS』だ。本作の主人公・坂本太郎は、第2話時点で27歳と判明。しかも結婚しており、一児の父なのだ。
この漫画は、「元・伝説の殺し屋が結婚して引退し、太った」という設定が敷かれており、「太ったのに鬼強い」ギャップが面白さを生み出している(ふくよかな男性が、実写映画の影響を感じさせるキレッキレのアクション描写で輝くという斬新性も大きな強み)。もちろんその部分が最大の魅力なのだが、「20代後半」「妻子持ち」「恐ろしく無口」という坂本の主人公像は、『るろうに剣心』や『銀魂』の裏話を聞いた後だと、なかなか感慨深いのではないか。
作品のテイストこそ違えど、「かつて最強の殺し屋で、いまは『NO KILL(殺さない)』を貫く」坂本は、緋村剣心の人物像に通じるものがある。また、『SAKAMOTO DAYS』のヒロイン、陸少糖(ルー・シャオタン)は『銀魂』の神楽を彷彿とさせる部分もあり、坂本と彼に魅せられたエスパーのシン、ルーの3人組の構造は、万事屋のメンバーにも近い(シンが新八と同じツッコミポジションであるという点もニヤリとさせられる)。
もっとも、先に挙げたように『SAKAMOTO DAYS』は、作品単体でみても実戦形式のアクションとほほ笑ましいコメディの配合が秀逸。激しい戦闘で坂本がやせる演出は笑えると同時に、「本気モード」的なカッコよさも両立している。現在コミックスは2巻まで発売中で、6月14日発売の週刊少年ジャンプ2021年28号では表紙&巻頭カラーを獲得。今後も、この勢いは加速していきそうだ。きめ細やかなアクション構築&演出はアニメ映えもしそうで、メディアミックスも期待できる。
また、少年ジャンプ作品では仲間りょう氏による『高校生家族』も極めて斬新。本作は、同じ高校に父・母・長男・長女・飼い猫が入るという設定で、これまでに話してきたような「年齢の枠」を超越している。ギャグ漫画のため縛りはよりゆるいかと想像されるが、それでもこれまでになかった物語だ。浮世絵調で話題をさらった『磯部磯兵衛』の仲間氏らしいアイデア作である。
2021.07.03(土)
文=SYO