変化② 女性コンビや女子高生も主人公に
次に、性別について。「少年漫画」であれば、やはりこれまでは男性主人公が多かった印象だ。女性主人公の場合も、男性とのバディものが基本構造。完全に女性の単独主人公だと、少年ジャンプでは近作だと『アクタージュ act-age』くらいであろうか。
そんななか、面白い動きを見せているのが週刊少年サンデーの連載作品群。福井セイ氏による『かけあうつきひ』は、芸人を目指して上京した女性2人がコンビを組み、駆け出しの芸人として奮闘する物語。2021年5月12日発売の週刊少年サンデー第24号で連載開始したが、第5話時点で「早くも大反響御礼!」としてセンターカラーを獲得している。
『響~小説家になる方法~』の柳本光晴氏は、新作『龍と苺』でも引き続き女性主人公の物語を踏襲。こちらは「女性棋士」をテーマにした作品で、周りを畏怖させるほどの超好戦的な女子中学生が、将棋の魅力にのめり込んでいく物語だ。6月17日には第4巻が発売。
マンガ大賞2021で大賞に輝き、現在話題沸騰中の『葬送のフリーレン』(原作/山田鐘人 作画/アベツカサ)は、魔王を倒した勇者一行の“その後”を描く物語。勇者や仲間は天寿を全うするが、長寿の種族であるエルフの魔法使いフリーレンはひとり残され、その後の時代を生きていく。命の尊さと儚さを“後日談×ファンタジー”という文脈で描く画期的な作品だが、こちらも「女性主人公の少年漫画」といえるかもしれない。コミックスは4巻まで発売中だが、現時点で累計発行部数は250万部を突破するなど大人気だ。
WEBメディアとなる「少年ジャンプ+」等にまで範囲を広げれば、もはや自由度は無限大。先日も、モリエサトシ氏の『16歳の身体地図』が大いに話題を集めた。こちらは、重い生理痛に苦しむ女子高生と、初潮がまだ訪れない同級生の物語。「スポーツ漫画」というジャンルにおいて新たな挑戦を行った本作は、WEBというフィールドにおける、少年漫画の可能性を十二分に示した。
ちなみに、『怪獣8号』は主人公・日比野カフカの年齢が32歳、『SPY×FAMILY』はメインで描かれる疑似家族の中に「少年」がいない。どちらも大人気漫画であり、今後、より自由な年齢表現が誌面のほうでもなされていくかもしれない。
2021.07.03(土)
文=SYO