W杯の2週間でコミックスの発行部数は200万部増加
「史上最もイカれたサッカー漫画」――強烈なキャッチコピーが冠されたヒット漫画をご存じだろうか。その名は『ブルーロック』(原作:金城宗幸 作画:ノ村優介)。コミックス累計発行部数は2023年3月時点で2,400万部を突破し(既刊23巻)、TVアニメが2022年10月より放送開始され、人気はさらに加速。
個人の体感としても、サッカーワールドカップ効果もあってか街中で本作の話題を耳にする機会が増えた(実際、W杯期間中の2週間でコミックスの発行部数が200万部増加したという)。
日本国内で1、2を争う人気スポーツだからこそ、『キャプテン翼』や『GIANT KILLING』等、世に知られたサッカー漫画は数多い。群雄割拠の中で『ブルーロック』はなぜ『史上最もイカれている』と評されるのか。本稿では『ブルーロック』の“特異性”にスポットを当て、人気の秘密を解き明かしていきたい。
そもそも『ブルーロック』はどういう物語なのか? を語る前に、国内のスポーツ漫画について改めて考えてみよう。おおよそスポーツ漫画には、ざっくり2種類のタイプが存在する。「プロ」か「アマチュア」かだ。後者には「部活漫画」も含まれ、『SLAM DUNK』や『ピンポン』等がそれにあたる。『ハイキュー!!』や『火ノ丸相撲』のようにアマからプロへと成長していく作品や、フィギュアスケートのようなプロ/アマの区分けが特殊なスポーツを題材にした作品はあれど(『メダリスト』等)、おおよそこの二つに区分される。
では『ブルーロック』はどうなのかというと、後者(アマチュア)なのだが部活漫画ではなく、他に類を見ない特殊な形態となっている。本作は全国のサッカー高校生300人(FW登録選手)が招集されて特殊な施設「ブルーロック」に閉じ込められ、最後の一人になるまで熾烈なサバイバルを繰り広げるという物語なのだ。当然サッカー部は続けられなくなるし、家にも帰れない。文字通り「監獄(ロック)」というわけ。
ちなみに脱落者は一生サッカー日本代表に入る権利を失うという超ハードモードな内容。
その代わり、ランキング上位5名はU-20W杯(20歳以下の選手で構成された世界大会)に選出される。リスクもリターンも凄まじいプロジェクトなのだ。
2023.03.25(土)
文=SYO