話題作がひしめき、「群雄割拠状態」と話題を集めた2023年春クールのアニメ。1クールで完結の場合は6月末が最終話放送/配信となるわけだが、各作品がクライマックスに向かうなか勢いを感じさせるのが『【推しの子】』だ。
原作は、『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』の赤坂アカ(原作)×『クズの本懐』の横槍メンゴ(作画)という人気漫画家同士のコラボレーションで、芸能界の“嘘”を描く人気漫画。2020年4月に「週刊ヤングジャンプ」にて連載を開始し、2021年には「次にくるマンガ大賞 2021」のコミックス部門で1位に選ばれ、「マンガ大賞2021」では5位にランクインした。ちなみにこの年のマンガ大賞は
1位(大賞):『葬送のフリーレン』
2位:『チ。ー地球の運動についてー』
3位:『カラオケ行こ!』
4位:『水は海に向かって流れる』
5位:『【推しの子】』
6位:『怪獣8号』
7位:『女の園の星』
8位:『メタモルフォーゼの縁側』
9位:『九龍ジェネリックロマンス』
10位:『SPY×FAMILY』
となっており、当然ながら人気作が並んでいる。
『【推しの子】』においては、本誌掲載から1週遅れで「少年ジャンプ+」で初回無料配信されたこともあり、読むハードルの低さも“バズ”の創出に貢献したことだろう。余談だが、『【推しの子】』はアプリ「ヤンジャン!」で単話購入が可能。1週遅れの配信を待てない自分のような人間にとっては、非常にありがたい動線が引かれている。
『【推しの子】』の簡単なあらすじは、こうだ。16歳のトップアイドル・星野アイが、双子を極秘出産(子どもの父親は周囲にも知らせず)。生まれた子どものアクアとルビーは、何の因果か彼女のファン(出産時の担当医師・ゴローとかつての患者・さりな)が前世の記憶を持ったまま転生したものだった。
アイは世間にふたりの存在を隠しつつアイドル業を続けていたが、何者かの差し金で過激ファンに殺害されてしまう。アクアは芸能界にいるであろう“黒幕”への復讐心から、ルビーは亡き母への憧れから芸能界へと進み、元・天才子役の有馬かな、劇団ララライの若き天才俳優・黒川あかねたちを巻き込みながら芸能活動に励んでいく。
本作については、本連載でかつて『呪術廻戦』や『僕のヒーローアカデミア』等を絡めつつ紹介したが、特徴としてリアルとファンタジーの融合が挙げられる。「ファンが推しアイドルの子どもに転生する」というフィクションに、芸能界の約束事/システムやシビアな裏事情を含んだリアルな内容が絡み、2次元であることで逆に生々しさや現実味が引き立つ――つまりギャップの演出が効いている印象だ。
2023.06.28(水)
文=SYO