言葉にどれだけ説得力を出せるかが一番のテーマだと思ってやっていました

――最新主演作『FUNNY BUNNY』で演じた剣持聡も、まさに新しい挑戦で、型にはまらない癖の強い人間でしたね。

 本当に、自分があまり得意じゃないキャラクターというか。最初、この作品に出会ったときは、純粋にただ読者として読んでいたんです。映像化すると決まって、監督から「大志、剣持がいいんじゃないかな? お願いできる?」と言われたとき、すごくびっくりしました。剣持のような役は、あまりやってこなかったので。何なら、僕は(剣持の相棒の)漆原をやると思っていたんですよね(笑)。

――剣持とは、まったくの想定外だったんですね。

 そうなんですよ。けど、原作を読んでいたときから、僕は剣持というキャラクターがすごく好きで。だからこそ、自分の中で「イメージ通りにやりたい」という強い思いがありました。剣持はすごく人を惹きつける力があって、言葉に重みがある男だと思ったんです。

 逆に言うと、観てくださる方が剣持の言葉についてこられないと、ただの変な痛いヤツになってしまうから、言葉にどれだけ説得力を出せるかが一番のテーマだと思ってやっていました。

――剣持を演じるため、どんな準備をされたんですか?

 剣持の言葉の重さや説得力は、彼の過去や生い立ちとか背負っているものからくるんだ、と考えました。彼の痛みを自分のものにしないといけなかったので、僕自身の同じような記憶をいろいろとほり返して、自分の現実と向き合う時間を作りました。なので……結構きつかったし、疲れましたね。

 ただ、痛みがわかっているからこそ、剣持は人の気持ちに寄り添えるし、甘くなく、人と向き合うときは命がけで関わる男でいられると思うんです。人のことにこれだけエネルギーをかけて向き合えるのは、剣持の強さであり格好よさなので、大事にしていました。

――今、お話しされた剣持の素敵な部分は、中川さんに通じるところもありますか?

 いや! 僕は……適当です(笑)。けど……自分のことではなく、人のことで喜べたり、苦しんだりできるのは、すごく素敵なことですよね。自分のためだとできないことも、人のためだから頑張れたり、変われたりすることは、僕も意外とあるかもしれないですね。

 このお仕事は、観てくれる人たちがいるから頑張れるので、根本のところは剣持と近いかもしれないです。

2021.04.18(日)
文=赤山恭子
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=徳永貴士
ヘアメイク=池上豪(NICOLASHKA)