今回は自分の等身大に近い、ニュートラルな声で臨みました
田辺聖子の青春恋愛小説『ジョゼと虎と魚たち』がアニメーション映画になった。
2003年には実写映画化され話題をよんだ名作。口が悪く意地っ張りの、車椅子のジョゼと、夢を追い求める大学生の恒夫の物語が、アニメーションならではの色彩鮮やかな映像とともに描かれる。
恒夫の声を演じたのは、ドラマ・映画・コント番組にひっぱりだこの中川大志さん。声のお仕事や今後の夢についてお話を伺った。
ジョゼみたいな女の子と付き合うとしたら、0か100なのかもしれないですね
――声のお仕事としては、映画『ソニック・ザ・ムービー』(2020)でソニック役の吹き替えをなさいましたが、アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』の恒夫役はそれとは対照的な声でした。今回はいかがでしたか?
同じ声のお仕事でしたが、全然違いましたね。
前回はテンションの高いキャラクターで、今回は自分の等身大に近い、ニュートラルな声だったので、あまり作り込みすぎない収録になった気がします。
――普段のお芝居と比べて、声の演技は何か特別に意識されるのですか?
いつもの芝居とは、何もかも全て違う気がします。表情などで伝えられず、気持ちも「音」として声に載せなければいけません。
でも、映像と声がひとつになってはじめて、キャラクターの演技が完成するのだろうと思っています。
――今回演じられた、恒夫はどういう人と捉えていましたか?
大学4年生で、夢や目標をちゃんと持って突き進んでいる、しっかりした男の子だなと思いました。
その半面、ちょっと抜けている(笑)、天然な部分もあるので、そこがかわいらしいですよね。
――恒夫をある種振り回すジョゼのことはどんなふうに感じていましたか?
ジョゼは、普段は、自分と外の人間を線引きして壁を作っています。本当に信頼した人にしか胸の内を見せない。
でも、そんななかでもときどき、子供みたいに泣いたり笑ったり、怒ったりする素直な顔が垣間見られる。
そういうパーソナルな部分が見られると、普段がパワフルなだけにギャップが魅力的で、もっと知りたくなるなと思っていました。
――もしも、ジョゼみたいな女の子が近くにいたら、中川さんは恒夫のように近づきますか?
いやー、どうでしょう(笑)。わからないです。面白い子ですし、魅力があって引き込まれます。
でも、付き合うとしたら、0か100なのかもしれないですね。
中途半端な付き合い方では見透かされてしまいそう。一歩踏み込んだら、あとに引けなくなる気がします。
――ジョゼの声を演じた、清原果耶さんとの共演はいかがでしたか?
共演は何度かあるのですが、声のお仕事でご一緒するのは初めてでした。
ただ、役者同士なので、不安だったり、わからないことだったり、共有できることはたくさんあります。
だから、すごく安心感がありましたし、頼りにさせていただきました。
――演じていて、大変だったのはどういう場面だったのでしょう。
やはり前半戦です。ジョゼと恒夫の関係ができあがる前は、僕らもキャラクターを掴む作業が必要でした。
なので、監督から指示をいただきながら、何回も何回も試しながら探っていった感じです。
中盤からは、物語のなかでもふたりの距離がぐっと近くなるので、そこからは一気にギアが上がるのを実感しました。
2020.12.25(金)
文=黒瀬朋子
撮影=平松市聖
スタイリスト=山本隆司
ヘアメイク=池上 豪(NICOLASHKA)