※この記事は、CREA2020年2・3月合併号に掲載されたものです。CREA WEBで一部公開していたインタビュー記事を、特別再編集して、全文公開します!

 置かれた環境や関わった仕事によってしなやかに、時にダイナミックに変化していく自分の心の内を、その都度しっかり言語化してきた高橋さん。取材で浮き彫りになった“絶望”と“全盛期”とは。


“絶望”を思いきり疑似体験してみたかった

 タナダユキ監督が自身の小説を映画化した『ロマンスドール』は、ラブドール職人であることを隠し続けている夫の哲雄と、妻・園子との10年のすれ違いを描いた切なくも美しい物語。

 哲雄役の高橋さんは、「ファンタジーと生々しい部分とのバランスが素晴らしかった」と監督を絶賛するが、インタビューで頻出したのは、“絶望”という意外な言葉。どうやら、これが本作の高橋さんのキーワードだったよう。

「多分、すれ違いを重ねたことで、哲雄と園子はある朝起きたら、それぞれ別のレイヤーに存在しているような感覚になってしまったと思うんです。

 住んでいる次元が違うから、哲雄が見上げるマンションの窓の向こうに園子はいないですし、園子がいくら待っていても、哲雄はその世界には帰ってこない。

 2人でいるほうが1人でいるより孤独を感じてしまう、そういう悲しみやすれ違いは、恋愛や結婚にはどうしたってあるわけで。

 タナダさんの脚本には、そういう絶望が横たわっているんです。きっとそれはタナダさんもどこかで味わった絶望感だったと思いますし、僕自身も、この絶望を思いきり疑似体験してみたいと思いました」 

2020.09.13(日)
文=松山 梢
撮影=桑島智輝
ヘアメイク=田中真維(マービィ)
スタイリスト=秋山貴紀

CREA 2020年2・3月合併号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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