2021年3月5日(金)に公開されるホリプロ創設60周年記念映画『NO CALL NO LIFE』。

 壁井ユカコ氏の同名小説が原作の本作は、壊れそうなほど脆く、不安定な思春期の男女2人が織りなす、胸が擦り切れるほど切ないラブストーリーだ。破滅的でありながら愛おしくもある2人の姿を、今注目の若手映画監督・井樫 彩が美しい映像とともに描き上げている。

 主役である、親からの愛情を知らずに育った主人公の女子高校生・有海を優希美青さん、同じ境遇の不良少年・春川を井上祐貴さんが演じた。

 作品の上映を記念して、優希美青さんと井上祐貴さんに映画の舞台裏や、同作にかけた思い、プライベートでの恋愛感などを聞いた。

大事な節目の作品に出演した心境とは?

――”ホリプロ60周年記念”という、意義ある作品に出演が決まった際の心境はどうでしたか?

優希 60周年というとても大事な節目の作品に出演させていただけるということで、最初は嬉しいという気持ちが大きかったです。でも、だんだんと不安がまさってきてしまって…。作品自体が難しかったのでどこまで演じ切れるのかとか、主演として大丈夫だろうか、とかクランクインするまではひたすら不安でしたね。

井上 僕も同じで、最初は嬉しいという感情が勝っていたんですが、”ホリプロ60周年記念作品”ということを考えれば考えるほど、その重みがどんどんのしかかってきて、プレッシャーが強くなっていきました。

優希 やっぱりそうですよね! クランクアップしてから、試写で完成した作品を観るまでは不安がどこかにつきまとっているような感じで。

 でも井樫監督に素敵に撮っていただけて、今はやり切った、という感じで公開が待ち遠しいです。

優希さんの有海を演じてくれたら、それでいい

――優希さんはクランクイン前に監督から「優希さんらしく、優希さんの有海で」と伝えられたとのことでしたが、どのように役作りをされましたか?

優希 監督は初めて私と会った時に「優希さんには闇がある」って思ったみたいなんです。私の奥にある闇の部分を上手く表に出せたら「それが優希さんの有海になる」と。「変に役作りをせずに、考え込みすぎずに、私ならこうするって演じてみたら大丈夫だから、思うままにやってみて」と言われたんです。

 それからは、自分だったらどう感じるんだろうって考えて演技を決めていきました。そうしているうちに、最初に台本を読んだときには私と有海は全然似てるところがないという印象だったのですが、次第に共感できるところがとても多いということに気づかされて。監督は、私のことをとても理解してくださっているんだなって、思いました。

――井上さんは撮影に向けて春川という人間にしっかり向き合って、緊張感を持って演じたいとおっしゃっていました。実際演じてみて春川への印象が変わったところなどありましたか?

井上 撮影前からいろいろディスカッションして役に向き合っていたので、春川っていう人間に対してのイメージとか、思いというのは撮影に入る前と後では大きくは変わらなかったですね。ただ、実際に優希さんはじめ、他の役者さんとのお芝居を通しての変化というか。台本から自分が想像していたものを遥かに超えたものになって、お芝居の素晴らしさを改めて感じた気がします。

――本作は、家庭環境が似ている影のある2人が惹かれあっていくというストーリーだったんですが、演じるにあたって苦労した点はありますでしょうか?

優希 私はなんとなく有海の気持ちが分かるなというか、寄り添えるなという感覚でした。

 中学校一年生から仕事を始めて、母と一緒に福島から上京していたんですが、私が朝早くから夜まで撮影だったり、朝学校に行ってそのまま放課後現場に行ったりという毎日だったんですね。なかなか家で両親と一緒にいる時間も取れないし、あったとしてもゆっくり話とかあんまりできなかったので。その時、嫌だったな、寂しかったな、と感じていた経験が今回役として活かせたかなと思います。

井上 僕は春川とは全然違う環境で育ったので、お母さんからの愛を受けられずに育った彼の気持ちを完璧に理解することはできなかったかもしれないです。でも、時間をかけて、春川のことを深く考えてみればみるほど、もし自分が春川だったらもの凄く辛いなって。パンフレットに書かれているように「本当に怖いものなんて何もなかった」とか、これ以上失うものなんてない、くらいの感覚になるのはわかる気がします。

――演じるにあたって大変だったとか、ここは観てほしいというシーンを教えてください。

優希 最後の雨のシーンは大変でしたね。気温も低くて、すっごい寒かったんですよ(笑)。演じる上でも、直前まで有海の気持ちが揺れ動いていた後のシーンなので、気持ちを作るのも大変でした。

井上 僕はお母さんとのシーンですかね。お母さんとのシーンは、本当に短いシーンなんですけど、すごい濃かったですね。最後の方でお金が欲しいって頼んで、「受け取ったらもう二度とあんたの前には現れない」っていうセリフを言うんですけど、そんなこと大好きなお母さんに言うって考えただけで僕自身も辛くなってしまいましたね。母親を演じている桜井(ユキ)さんも、なんともいえない表情をされていて、今思い出してもグッとなるようなシーンです。

2021.03.04(木)
文=渡里友子
撮影=松本輝一
スタイリスト=長谷川綾(eleven./優希)、西脇智代(エヌアイティー/井上)
ヘアメイク=RYO(ROI/優希)、天野誠吾(井上)