現在放送中のドラマ「君と世界が終わる日に」(日本テレビ系/毎週日曜22時30分)で主人公の竹内涼真さんが演じる響と中条あやみさんが演じる来美の同級生であり、警察官でもある等々力比呂を演じる笠松将さん。
デビュー以来、精力的に俳優活動を重ね、2019年には映画・ドラマの出演数18本。2020年には映画『花と雨』で初の長編映画主演を果たすなど、今最も注目を集めている俳優のひとりだ。
今作で笠松さんが演じる等々力は、物語に波紋を起こすような重要な役どころ。鋭さの中にも心境の揺らぎが感じられる独特な存在感を放っている。
真摯に芝居に向き合いながら、「なんでもやれる役者になりたい」と語る笠松さんからは、俳優としての矜持と、達観した境地が感じられた。
これからの世代を牽引する、俳優・笠松将の魅力に迫る。
強さの中にある弱さや、弱さの中にある強さに魅力を覚える
――今、ちょうどドラマでは6話が終わったところです。笠松さん演じる等々力という役は警察官でありながら周囲を振り回すようなことを平気でしてしまったり、物語の中では独特な役どころですよね。気になってしまう存在というか。
実は、撮影に入る前の設定では、等々力という役は今よりももっと精神的に強いキャラクター像だったんです。だけど、僕にはどうしてもそうは思えなくて。
等々力という人間は弱さがあるからこそ、一見強く見えるような振る舞いをしているんじゃないかと思ったんです。自分で演じる上でも、内面とのギャップがあるキャラクターの方が心理的に役柄を作りやすいし、他の登場人物も引き立つ気がして、プロデューサーや監督と、等々力の内面に潜む弱さについて相談させていただきました。
これは僕の好みなんですけど「強さの中にある弱さ」とか「弱弱しいキャラクターのふり絞った勇気」とか、そういう部分って、人間の魅力じゃないかと思うんです。提案した結果、自由にやらせていただいて、弱さとか迷いが垣間見える等々力を演じることができました。
これからの展開の中でも、ジワジワと心が揺れ動く部分が出てくるので、そのあたりに注目して見てもらえたら嬉しいですね。
出来る限り嘘を少なく。それは心がけている
――まさに、その点を感じました。心が揺らいでいる等々力がいるからこそ、物語が大きく展開し、この後どうなっていくんだという気持ちで観ていることができました。他に演じる上で気を付けていることってありますか?
出来る限り嘘を少なくすることですかね。
どこまでいっても僕は笠松将という人間であって、等々力比呂ではない。世界観も違うし、役柄と僕のバックグラウンドもそれぞれ違う。僕の中でそこが大前提としてまずあるんです。
多分俳優さんの多くは、そのシーンとか役柄に合わせて気持ちを作っていく方が多いと思うんですが、僕は全然違うアプローチをとっていて。その時の自分の気分、どう感じているかを素直に表現するようにしています。
どんな人にでも共感できる部分があるように、どんな役でも、自分っぽいところってあるんです。そこを拾い上げて僕自身が感じているままに演じる。
考えて作りあげた気持ちで演技をしても、嘘の設定に嘘の演技を重ねてしまうことになる。それをカメラに映しても、僕は、映像の先にいる視聴者に何かを伝えることは難しいと思うんです。なので、出来る限り嘘は少なくと心がけていますね。
『デイアンドナイト』での経験が邪念を払ってくれた
――演技に対する向き合い方が定まってきたのはいつぐらいからですか?
「いつ」ってはっきり転機があったわけではないのですが、作品として大きな影響があったのは『デイアンドナイト』ですね。そこで、藤井道人監督や先輩方にお会いできたことは僕にとって大きな経験になりました。
直接的に「嘘を少なくした方がいい」とか教えていただいたわけではもちろんないのですが、作品の中での先輩方の振る舞いを見ているうちに、自然と「上手く見せようとしなくていい」ということを学びました。
それまでは、良く見せよう、とかそういう虚栄心に囚われる部分もあったのですが、邪念を払ってくれたというか。初の大型上映作品でもありましたしね、大きな転機になりました。
2021.02.27(土)
文=CREA編集部
ヘアメイク=SHUTARO
スタイリスト=徳永貴士