友に「俳優を目指す」と伝え上京

――そもそもなぜ役者を目指されたんですか?

 高校を卒業して18の時に東京に出てきたんですが、上京する時には俳優になると心に決めてました。

 実は高校生の時に、スカウトされたことがあって。当時はサッカー部に入っていたこともあって、芸能活動をしたりとか結局しなかったんですけど。

 進路を決める時に、漠然と就職でもするかなと思っていたんですが、家族で話をしていたら、母親やお祖母ちゃんがスカウトのことを覚えていて「大学に行ったと思って4年間頑張って、ダメだったら帰ってくればいいじゃん」って言ってくれて。

 そうだな、そしたら思い切ってみようと。友だち数人だけに「俳優目指す」って言って、何のあてもなく東京に出てきましたね。

最初はバイトばかり、一喜一憂してました

――俳優としてやっていける、と感じたのはいつぐらいからだったんでしょうか。

 もう、本当にそれは最近のことですよ。上京してしばらくはバイトばっかりしてましたし。ドラマとか映画とかのエキストラに応募したりしながら。

 でもね、エキストラもそんなに簡単なものじゃないんですよ。書類でバンバン落とされちゃって。それで、落ちる度にうわーって凹んで。ようやく合格したときなんかには、親に電話して「明日だれだれさんいる現場に行ってくる」って伝えたり。

 まさに一喜一憂してましたね。当時はやっぱりカメラに映りたいから、目立とうとし過ぎて「あのチョロチョロしてるヤツ邪魔だ!」なんて怒られたりして。

 そういうことを積み重ねているうちにオーディションに通るようになってきたり、現場で先輩の俳優さんに声をかけられるようになったり。徐々に徐々にようやく、という感じですよ。

コロナ禍で変わった仕事への向き合い方

――キャリアを重ね、2019年には20代での映画・ドラマの出演本数が最多となりました。2020年の1月には長編映画の主演も飾ります。そんな順風満帆の中、コロナ禍が発生したわけですが、影響は大きかったですか。

 実はメチャクチャ影響があったんです。仕事が無くなって、2か月オフになってしまって。もともと僕はワーカーホリックみたいな面があって、オファーがあったら基本的に受けるくらいのスタンスだったので、最初の3日間ぐらいはとにかく仕事が無いということに不安を感じていました。

 でもはじめは悩んでいたんですが、3日経ったら、考えても仕方ないし、逆にこれまで普段やれなかったことが出来るじゃんって思えるようになって。不安って長続きしないんだな、と思いましたね(笑)。

 本屋さん行って10冊ぐらい手当たり次第に買って読んだり、喫茶店に通ったり。インプットする期間になったというか、今となってみれば良い時期だったのかもしれないです。そうして2か月過ごしている中で、俳優業に対する考え方も変わりました。

 ハッキリ言うと、俳優を辞めようかなって思ったんです。続けられるならもちろん続けていきたいけど、この仕事はオファーが来なければどうしようもない仕事じゃないですか。なるようにしかならないし、このまま俳優業がダメになるならまたバイトをすればいいし。

 仕事の無い2か月を過ごして、一度死んだ身というか、いつどうなってもおかしくないという感覚を受け入れるようになりました。

 だから、今こうして役者としてのオファーをいただいて仕事が出来ているということはありがたいですね。あの2か月があったことで、改めて作品、そして演技に向き合ったときに、役者としてだけでなく、笠松将という1人の人間として、これまで気づけなかった部分に気づくことがあるんですよ。

 もうなんかね、今は余生を楽しんでいるような感じです(笑)。

なんでもやれる役者になりたい

――役者としても、人としても深みを増したように感じられます。最後に役者としてどうありたいか、理想像を教えてください。

 なんでもやれる役者になりたいですね。それはどんな役でも、という話じゃなくて。どういう規模でもという意味で。

 例えばハリウッド映画にも出演するし、日本の単館映画にも、ゴールデン帯のドラマにも、深夜帯のドラマにも出演する。そんな役者になりたいです。

 それぞれの規模の作品にそれぞれの魅力があるし、映画でもドラマでもオファーがあったら積極的に受けていきたいと思っています。そうやって僕が出演した作品の1本1本が良い作品だった、とみなさんに感じてもらえたら、それが嬉しいですね。

笠松 将(かさまつ・しょう)

1992年11月4日生まれ、愛知県出身。主な出演作は『デイアンドナイト』、『おいしい家族』、『花と雨』、『ドンテンタウン』、『ファンファーレが鳴り響く』など。吉野竜平監督の『君は永遠にそいつらより若い』が2021年に公開予定。

日本テレビ×Hulu共同製作ドラマ「君と世界が終わる日に」

プロポーズ直前、トンネル事故に遭い閉じ込められてしまった青年・間宮 響(竹内涼真)。命からがらトンネルを脱出すると、世界は一変。荒れ果てた街並み、おびただしい数の遺体、街をさまよう“生ける屍”たち…。最愛の恋人、来美(中条あやみ)と再会し、絶望的状況を生き抜くことができるのか⁉

日本テレビ系にて毎週日曜22時30分~放送中。Season2はHuluオリジナルで3月配信開始。

次回、第7話は2月28日(日)22時30分から。「第7話は台本で読んでいて、僕たちでも驚いたようなシーンが待っています。シーンを撮影したキャストやスタッフから話を聞くと、みんな自然と涙が流れて、大号泣だったって聞いて、僕も早く見たいんです(笑)」とは笠松さんの談。お見逃しなく!

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2021.02.27(土)
文=CREA編集部
ヘアメイク=SHUTARO
スタイリスト=徳永貴士