これまで見たことのない、のんさんの魅力を引き出せたら

――みつ子は脳内相談役の「A」と朝から晩までしゃべりまくります(笑)。明るく、本当に楽しそうにシングルライフを送る様子は、のんさんにぴったりでした。

 私はいつもまっさらな状態で脚本を書いてしまうので、今回も原作を読みながら配役をこの人に! と思ったのは前野朋哉くんだけだったんです(笑)。

 でも、プロデューサーからみつ子役にのんさんの名前が挙がって、なるほど! と思いました。年齢不詳な感じもあるし、わたしが関わることで、いままで見たことのないのんさんを引き出せたら、やりがいがあるなと思いました。

――なにより楽しいのが、みつ子と脳内相談役の「A」のかけあい。みつ子を絶対に否定しないAの声に、中村倫也さんはすばらしいキャスティングでした。過去の大九監督作品でもたびたび出演なさっています。

 みつ子のような人がどんな声だったら安心するのか。品が良くて、紳士的で、耳障りのいい声って誰だろう? と思っていたら、プロデューサーから中村倫也さんの名前があがりました。

 灯台下暗しじゃないけど、「ああそうだ! ここにいた!」と。絶対に彼じゃなきゃいやだと思い、お忙しいので大変でしたけど、どうにかお願いしてもらいました。

「プレスコ」と言って、先にのんさんと中村さんのかけあいの音声を録音し、撮影現場では、技師が中村さんの声だけを出して、それに合わせてのんさんに演じてもらいました。

2020.12.20(日)
文=黒瀬朋子
撮影=平松市聖