一歩ずつでも前へ進めば、ドアは必ず開く

医療ビジネスの未来に向けて、オンラインで真摯に意見を交わすフォラケさん(左)と、尾形さん(右)。

――ナイジェリアのフォラケさんと香川県の尾形さん、遠く離れたところで活躍されているお2人を結んでの遠隔対談ですが、共通する想いもたくさんあるのではないでしょうか?

尾形さん フォラケさんが救急車の話をされていましたが、実は日本の救急車にも胎児の状態を確認できる機材は搭載されていないんです。分娩の時に命を落とす妊婦さんは世界で1年に200万人いるといわれていますが、1分でも早く処置できたらその数が少しでも減らせるのではないかと思います。

 そのためにも、まずは日本の救急車すべてにMelody iを乗せてもらえるよう、働きかけていきたいと思いました。

――フォラケさんと尾形さんの事業がコラボレーションできれば、すばらしいマッチングになりますね。

フォラケさん そうですね、とてもすばらしいコラボレーションの機会だと思います! 出産は世界でも救急搬送や救急医療のトップ3に入る要因です。こういったデバイスにアクセスして胎児の状態を確認できれば、救急隊員にとってとても有効だと思います。

尾形さん ERAのボードメンバーは女性が多くて、とてもうらやましい。日本ではまだ経営チームには女性が少ないように感じるのですが、とくに医療のビジネスにおいては、女性が参画することで、よりきめ細やかな経営ができるのではないでしょうか。

フォラケさん ERAのボードメンバーは当初女性がほとんどでしたが、逆に今は徐々に男性が増えて、バランスが変わりつつあります。日本では女性が少ないというのは、何が障壁となっているんですか?

尾形さん うーん、難しい質問ですね(笑)。日本では経営は男性が担うものという文化が長年続いていたので、その影響が残っているのかもしれませんね。

 今は徐々に女性が経営チームに加わることも増えてきていますので、それが当たり前になった時に、日本のビジネスのあり方も大きく進歩するのではないかと思います。ただ、今の時点では手をあげてくれる女性が見つかりにくいのが実情です。私の会社で、海外から女性マネージャーを迎えたりできたら、その進歩も加速する気がしますね。

フォラケさん アフリカにも優秀な女性がたくさんいますよ! 日本語が話せないかもしれませんが(笑)。

尾形さん だったら私がもっと英語を勉強しなきゃね(笑)。

――社会のあり方や個人のライフスタイルが急速に変化する今、10年後にはビジネスシーンも大きく様変わりしているかもしれません。お2人は、ご自身のビジネスを通して、10年後の世界をどう変えていきたいですか?

フォラケさん アフリカのどんな国や地域でも、何かあったらERAを利用して10分で救急医療を受けられるようにすることが私の夢。10年後には、カナダやアメリカで救急車を呼ぶ時に「911に電話して!」と言うのと同じように、アフリカで「ERAに電話して!」と言ってもらえるぐらい、認知度が高まったらうれしいですね。

尾形さん 妊娠や出産はとてもハッピーなことなのに、世界ではまだまだ妊娠によって命を落とす女性が多いことも事実です。そんなことが少しでも減らせるよう、世界中の妊婦さんにMelody iを届けることが私の夢なんです。だからそのために10年後も頑張っている最中かな。

――10年後のビジネスシーンで活躍したいという意欲のある女性は世界中に大勢いると思います。そうした女性たちに向けて、最後にお2人からエールをいただけますか?

フォラケさん 20代後半から30代にかけての女性には、ユニークなアイデアや大きな志を持ち、起業に挑んでみたいと思っている人もたくさんいると思います。でも、その年代はちょうど、家族を持つ時期とも重なるので、家族をとるか、ビジネスをとるか、選択を迫られることもあるでしょう。

 でも、私の例を見てもらえれば分かるように、それを両立することは、簡単ではないけれど可能です。1歳半で救急医療のお世話になった息子も今では5歳になり、私の仕事のこともだいぶ理解できるようになりました。それが私にはとても幸せです。

 小さな一歩でも前に進めば必ずドアが1つずつ開いていく。それを、多くの女性に知っていただきたいですね。

尾形さん 本当にそうですね。女性は妊娠・出産でどうしても仕事を離れざるを得ない場合がある。けれど、私の会社では、そういう女性スタッフをサポートし、キャリアアップにつなげる体制を徐々につくってきましたし、そういう企業は他にもあると思いますので、決してあきらめないでほしい。

 本当にやりたいことや夢があれば、たとえ社会に一度や二度否定されても、負けずに、根気よく挑戦し続けてほしいです。そうすれば必ず夢は叶うと思っています。

Folake Owodunni (フォラケ・オウォドゥンニ)

Emergency Response Africa(エマージェンシー・レスポンス・アフリカ) CEO & Co-Founder。ナイジェリア出身。救急医療体制が未整備なナイジェリアで会員制の緊急医療ケアサービス「ResQ」を展開する。AIを活用した緊急治療の判断システムの導入を検討。

尾形 優子 (おがた・ゆうこ)

メロディ・インターナショナル株式会社 代表取締役。京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻。インターネットと医療ICTの創成期からの経験を生かし、妊婦と赤ちゃんの周産期遠隔医療プラットフォーム「Melody i」の構築とビジネス化を目指す。

独立行政法人国際協力機構(JICA)

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