より幅広いスタンスで楽しめる

『ウォークアラウンド・タイム』の舞台美術(ジョーンズ作)の前で本物のダンサーが踊る
(C) Felix Clay 2013. Courtesy of Barbican Art Gallery

 この展覧会では『泉』(本物の便器にサインをして展示したレディメイド作品)や『彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも』(大きな板ガラスに観念的な図像を描いた作品)といったデュシャンの代表作にラウシェンバーグとジョーンズの作品などを加えた90点が展示されている。なかにはカニングハムがデュシャンへのオマージュとして作ったダンス作品「ウォークアラウンド・タイム」(1968)のためにジョーンズが手掛けた舞台美術も含まれている。

 今回の展覧会で話題なのが、フランスの現代アーティストのフィリップ・パレーノが展示全体の「演出」を担当していることだ。ケージの音楽とカニングハムのダンスから着想を得たパレーノは、ケージの譜面を演奏する2台の自動ピアノの音楽とダンサーがステップを踏む足音だけの録音を会場内に流した。さらに会期中の木曜夜と週末には、会場内でダンサーがカニングハムの代表作を実演する。

 また同時期のバービカン・センター内の劇場では「ダンシング・アラウンド・デュシャン」と銘打って、デュシャンと関係の深い舞台作品や映画を公開。とかく衒学的で難解だと敬遠されがちなデュシャンとその周辺のアートを、より幅広いスタンスで楽しむための機会となっている。 

『花嫁と独身者たち:デュシャンとケージ、カニングハム、ラウシェンバーグ、ジョーンズ』展
開催場所 バービカン・センター(ロンドン)
開催日時 2013年2月14日~6月9日
URL www.barbican.org.uk

鈴木布美子 (すずき ふみこ)
ジャーナリスト。80年代後半から映画批評、インタビューを数多く手掛ける。近年は主に現代アートや建築の分野で活動している。

Column

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2013.03.12(火)