郷土料理こそがイタリア料理の真髄!
イタリア各地方の郷土料理や、マンマが工夫して作った料理を研究している齊藤奈津子さんが、家でも出来る簡単なイタリア料理をご紹介します。
カルパッチョの意外な誕生秘話
日本でもお馴染みのカルパッチョ。
カルパッチョと聞くと、魚介を薄切りにしてオリーブオイルなどをかけた料理を思い浮かべると思いますが、イタリアでは薄切りにした生の牛肉にチーズがかかっている料理を指します。
1950年、ヴェネチアにある“ハリーズ・バー”という店の常連客が、オーナーのジュゼッペ・チプリアーニさんに「加熱した肉を医者から禁止されたけど、牛肉が食べたい」と注文したところ、生の牛肉にマヨネーズのソースとパルミジャーノ・レッジャーノをかけた料理が出されました。これが「カルパッチョ」の発祥とされています。
赤身の肉に白いマヨネーズのコントラストが、まるでヴェネチアを代表する画家、ヴィットリオ・カルパッチョの絵のようだということから「カルパッチョ」と名付けられたというのが定説。
ただ、未だに誕生経緯がはっきりとしない、めずらしい郷土料理といわれています。
面白いことに、いつしかそれが日本に渡り、牛肉を生魚に変えてアレンジした料理を「カルパッチョ」というようになりました。
近年それがイタリアに逆輸入され、日本食ブームも手伝って、イタリアのレストランでも“魚介のカルパッチョ”を目にすることが増えてきました。
美味しいものに国境はない、と感じますね!
ちなみに、ハリーズ・バーは今も健在。当時の常連客はあのヘミングウェイで、彼はいつも同じ席を予約していたそうです。
店内には「ヘミングェイの予約席というプレート」があり、座ることが出来ます。
ヴェネチアに行く際は、ぜひハリーズ・バーに寄って、ここのスペシャリテ「元祖・牛肉のカルパッチョ」と、イタリアのスパークリングワイン「プロセッコ」や、桃のピューレを合わせたカクテル「ベリーニ」も楽しんでみてください!
2020.08.26(水)
文=齊藤奈津子
撮影=佐藤 亘