ヒット曲&影のヒット曲にゾクゾク!

 百恵の世界は果てしなく深い。いきなりディープゾーンに踏み込むと、溺れて社会生活に戻れなくなる危険がある。まずはヒット曲からリッスン!

●「ひと夏の経験」

 歌詞にある「女の子の一番大切なものをあげるわ」の「『一番大切なもの』とは何?」というマスコミのゲスな質問に毅然と「真心だと思います」と答えたエピソードは有名。

●「プレイバック part1」

 「プレイバック part2」があるということは、当然「part1」もあるのだ。「part2」に負けずとも劣らない疾走感の凄さを体感できる! 歌詞に急に入る「聞いてね……」という呟きは色っぽくて「聞きます聞きますッ」と思わず声に出して答えてしまうので、電車の中で聴くのは避けたほうがいいだろう。

●「一恵」

 ファイナルコンサートのラスト曲の「さよならの向う側」が印象深いが、百恵ちゃんのラストシングルはこの曲。作詞がご本人(「横須賀恵」名義)で、その風情溢れる言葉選びのセンスの素晴らしさに仰天する。作曲は谷村新司。聴いてすぐわかるくらいザ・谷村メロディ!

歌の世界観にドギマギ!

 百恵の歌の歌詞のヒロインはとにかく魅力的だ。愛を求め凛と生きるその世界観に、頭までドップリ浸るのもこれまた一興。

●「絶体絶命」

 カフェで繰り広げられる三角関係の修羅場がそのまま歌に。「別れてよ!」「そんなことできない」と女性ふたりがすったもんだしてるのに、肝心の男はノコノコ遅れてやってきて「まあまあ落ち着いて」と言う。男、しっかりしろよ! と無性に腹が立つ名曲。

●「愛染橋」

 演歌調の百恵ちゃんが堪能できる。「うち」「よう知らん」などなど、百恵ちゃんの大阪弁よろしいで。中森明菜もカバーしている名曲!

●「秋桜」

 結婚前夜の歌なのに浮かれ度ゼロ。親から離れる不安のほうがヒシヒシと感じられる。この「秋桜」を実際結婚前夜に聞いたらマリッジブルーが深まるんじゃないかな、自分のときに確認してみよう……と思っていたが、確認する日がないまま時が過ぎ、今後も予定がないので、結婚式前夜にこの曲を聴いた人の感想をお聞きしたい。どうでしたか……?

2020.07.09(木)
文=田中 稲