手焼きせんべいは、常時十数種類
明石らしいものをと、作り始めて80年から90年になる「明石の柚ちどり」は、柚子の蜜掛け。柚子の皮をたっぷりすりおろして煮た蜜を、同じように裏面に刷毛で塗って仕上げています。こちらは、柚子の香りでさわやか。卵を多めにしたほの甘い生地とのバランスが絶妙です。手焼きならではの、軽い歯触りが特徴。カリッ、サクッとしたおせんべいらしい食感が楽しめます。香り高いほうじ茶がぴったり。もう1枚と、ついつい手が出てしまうでしょう。
他にも、すりつぶした金胡麻たっぷりの「城の道」、明石名産の焼き海苔を表面に貼った「やきのり」や、ぶぶあられと四万十川産の青海苔を入れた「青のり」、砕いたピーナッツを入れて焼いた懐かしい「びんず煎餅」など、12種類余りを店の一角で丁寧に手焼きしています。「気まぐれで、甘納豆を入れて焼いたりも」と原田さんはにっこり。
「前の晩に生地をこねて翌日に焼く、宵ごねがおいしさのポイント。生地のこね具合と温度管理が難しいんです。そして、それだけでなく、火加減と火の抜けも大切。種が7割、火加減が3割ですね」。近年少しずつですが、7代目の息子さんも焼いているのだとか。いつまでも、昔ながらの手焼きせんべいの伝統が守られますように。
そうそう、ここで焼いているのではないそうですが、今では作る職人さんが数少なくなった「アネス」と呼ばれる玉子ボーロ、通称「福ちゃん」も発見。ひとつひとつ表情が違うのが楽しいでしょう。こんなお菓子をつまみながら、冬のおやつの時間をほっこり過ごしたいものですね。
富士の山菓舗
住所 兵庫県明石市本町1-13-20
電話番号 078-911-2479
Column
そおだよおこの関西おいしい、おやつ紀行
生まれも育ちも神戸の生粋の神戸っ子で、長年の関西での取材経験からおいしいお店を知り尽くしている、ライターのそおだよおこさんが、関西の「今、食べてほしい!」というおやつを紹介します。
2013.01.13(日)