「復興ライブ」を僕も楽しみました

都築響一

 災害が起こるたびに寄付が呼びかけられ、それは大切だけど、いつも気になるのは「自分のお金がどこに行って、どう使われるのか、いまひとつ明確じゃない」こと。

 3人ともその思いが強かったので、今回はそれぞれひとつの場所や企画を選び、寄せられたお金を直接届けさせてもらおうと決めた。

 僕は音楽にかかわるなにかをサポートさせてもらいたかったが、東京からアーティストを呼んで大騒ぎして終わり、みたいな音楽フェスは避けたくて、地元のひとたちによる、地元のための小さな音楽会みたいなものを探していたら、阿蘇のふもとの西原村にある「くぼたくんち」というライブハウスが見つかった。

 久保田さんはジャズ好きが嵩じて、自動車整備工場の敷地内に小さなライブ空間を夫妻でつくってしまったひと。西原村は県外からの若い移住者がたくさん暮らす、普通の田舎とちょっとちがうオープンな環境で、震災前から地元アーティストによる手づくり音楽イベントを開いていたという。

 そこに震災が起きて「復興ライブ」をやりたいけれど、参加してくれるアーティストに謝礼を払うこともできないと聞き、ささやかながら支援させてもらうことにしたのだった。

 あれから4年あまり。「くぼたくんち」で3回目の「復興ライブ」を楽しむことができた。

 ジャズのバンドはもちろん、地元のひとたちがつくるお菓子やバーベキューもおいしくて、天気もよくて、リラックス・モード。

 ぶらぶらしていたら、丹念につくられた小さな埴輪を売ってる屋台を発見、小学生の女の子が店番している。「これ、きみがつくったの?」と聞くと、「ううん、お父さん」と。お父さんは埴輪作家なのかと思ったら、「いまあっちでサックス吹いてる」! 西原村って、そういう場所なのだ。

 日本の田舎らしからぬ開放的な空気だし、野菜は安くておいしいし。ライブ会場で久保田さんの奥さんとおしゃべりして「なにもかもイヤになったら、こういう場所に住みたいなあ」と言ったら、「身ひとつで来てください!」だって。

2020.04.14(火)
文=村上春樹、吉本由美、都築響一
撮影=都築響一、平松市聖

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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