原因はさまざま “太る”“老化”も対象に

 肥満、老化といった“変調”も、ここでは施術の対象。

「肥満とひと言で言っても、その理由はさまざま。むくみやコリによって太って見えたり、巡りの悪さが脂肪の代謝を妨げていたり。

 こうした変調を整え、体の深部から健康になると、骨格にあったちょうどいい体が甦ってきます。

 肌のたるみは、本来はもっと複雑なのですが、東洋医学で簡単に言えば『気虚(気の不足)』や『腎虚(腎精の不足)』などが原因とされます。

 心のケアについても同じ。

 悲しくて、落ち込んでいる場合は、肺経という経絡が滞っていたり、イライラする方は肝経にアプローチしたり。

 いずれにしても、症状をひとつひとつ取り除くというよりは、全身の巡りを良くすることで、自然治癒力を最大限に引き出し、コリや痛み、太りすぎや痩せすぎ、肌トラブル、イライラなど、心身の不調を和らげてくれます」

現代人に多い“首のコリ”

 渡辺先生によれば、近年、急増しているのが“首コリ”。

 パソコンやスマホに頼り切りの現代人にとっては、切っても切れない症状です。

「時代とともに、人間のコリも変わっています。

 ひと昔前までは、背中の一番表層にある『僧帽筋』が凝っている人が多かったのですが、今は、耳の真下あたりから鎖骨に向かって斜めに伸びている『胸鎖乳突筋』や、さらに深い部分にある筋肉が凝っている人が増えている印象。

 首コリに合わせて、気分が滅入る、気力がないなどメンタル系の症状が出ているかたも増えています。

 ですから、施術のしかたも、昔と今では違ってきていますね」

2020.06.17(水)
文=伊藤由紀
撮影=佐藤 亘