ベテランから新人まで、さまざまな映画監督に愛される個性派俳優・渋川清彦。ファッションモデルから転身を遂げ、さらに40代になったことで、脂が乗ってきた彼の魅力に迫る。
●寅さんにも近いハマり役との出会い
――15年の「第37回ヨコハマ映画祭」では主演男優賞(『お盆の弟』『アレノ』)を受賞し、翌16年の主演作『下衆の愛』で演じた映画監督役でも、かなりのインパクトを残されます。ご自身のなかで、大きな変化があったのでしょうか?
それまで役者の仕事がなかったらなかったで何とかやっていたし、あまり考えずにいたんですが、30代後半になって、バイトをしなくてもいいようになり、40歳を過ぎて、いい感じの役に巡り合うことができた気がするんですよ。役者の験担ぎとして、役を払わない=42歳の厄払いをしなかったことや、原田芳雄さんの影響もあって、和歌山の火祭りとして知られる御燈祭に毎年行っていることも良かったのかな(笑)。
――18年の主演作『榎田貿易堂』では同郷の飯塚健監督とともに、渋川市でロケーションをされました。
知っているホテルに泊まって、そこから現場に行くまでの道のりが嬉しかったし、ちょっと不思議な感覚でしたね。親や親戚が現場に来てくれるだけでなく、同級生が差し入れしてくれたのも、いい想い出になりました。この作品は、本当に面白い俳優さんばかり出てくれたし、自分で演じながら、榎田洋二郎というキャラクターが、どこか寅さんに近いものを感じていました。もし続編が作られるなら、主演じゃなくても是非やりたいと思っています。
2020.03.06(金)
文=くれい響
撮影=平松市聖
ヘアメイク=山崎惠子