「洋服の布地は使わない」こだわりはいたるところに

 親王や関白などの身分の高い人の装束に見られる雲立涌のほかに、もうひとつ松本さんがナウシカのモチーフにしたのは、やはり吉祥文様である鳳凰だ。

 風に乗って空を自在に飛びゆくナウシカの高貴な出自にぴったりである。

「主役であり族長の娘ですから、周囲よりも立派なところがなければと思いました」

 別のナウシカの衣裳は浅葱色で切り替えがあり、白地の部分には雲と色鮮やかな鳳凰が刺繍されている。

「織元の在庫を思い浮かべて、この雲と鳳凰の生地をナウシカに使いたいと思い、取り寄せました」

 松本さんにはひとつこだわりがあった。それは「洋服の布地は使わない」ということ。

「それは守りたかったんです。ですからデザイン画を起こす時点で、在庫を思い浮かべながら描いていました」

 その数は80種類200着! そこには実際に仕立てたにもかかわらず、演出の変更や進行上の理由から日の目を見なかったものも含まれている。

》インタビュー後篇「クシャナの衣裳」に続く

新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』ディレイビューイング

前編・後編 各1週間限定上映
前編 2020年2月14日(金)~2月20日(木)
後編 2020年2月28日(金)~3月5日(木)
https://www.nausicaa-kabuki.com/

衣裳で振り返る
新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』

2020.02.07(金)
文=清水まり
撮影=末永裕樹