CREA WEBの東京特集、歌舞伎企画第2回では、若手実力派の女方として注目を集める歌舞伎俳優・中村梅枝さんにインタビュー。
この冬、歌舞伎座で梅枝さんが出演される演目を軸に、歌舞伎のストーリーを現代的視点から振り返り、女方の芸の魅力について語っていただきました。
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» 第1回「歌舞伎座はじめてガイド」
» 第3回「中村梅枝さんインタビュー 後篇」
すべての役を男性俳優が演じる歌舞伎という演劇の大きな特色に、女方(おんながた)の存在があります。それは舞台の上だけに花開き実を結ぶ、美しくも艶やかな女性。
梅枝さんは、女方の名門・中村時蔵家に生まれ、1994年に6歳で四代目梅枝を襲名して歌舞伎座で初舞台を踏まれました。
品のある美しい容姿と情のこもった演技で多くの観客を惹きつけ、確かな技術に基づく高い演技力は通の歌舞伎ファンの間でも高く評価されています。
幕が開いてまもなく、自分の置かれた立場を知らされるお熊。梅枝さんの様子にお熊の心優しい人柄が滲み、切ない娘心が溢れ出ます。そこで目を引くのはその所作の上品な美しさです。
「歌舞伎は美を求める演劇なんです」と、梅枝さん。
恋する女性の胸のうちは等身大。なのに、現代とは違う生活様式のなかでの立ち居振る舞いの美しさは非日常。その絶妙なバランスのうえに女方の芸は成り立っているのです。
「これは歌舞伎のなかでも世話物といわれるジャンルの芝居、市井の人たちの暮らしを描いた作品です。ですから、その人がそこで毎日暮らしている雰囲気をいかに出すことができるかがとても重要。それでいて、ちょっとした所作が美しかったりカッコよかったり。そうした姿や場面がお客様の目に残るようにできているのが歌舞伎なんです」
舞台での所作の基本となっているのは日本舞踊。小さい頃から積み重ねて来たお稽古を踏まえてのことなのです。
2019.11.23(土)
文=清水まり
撮影=白澤 正