一体しかない正座するモアイ像

 中でも、いちばん見てみたかったのは、岩山の影にひっそり佇む「モアイ・トゥク・トゥリ」。“トゥク・トゥリ”とは“ひざまずく”という意味があり、およそ1,000体のモアイの中で唯一足を持ち、しかも正座をしています。

 最盛期の1500年頃のモアイは精悍な顔立ちなのに対し、モアイ・トゥク・トゥリはずんぐりむっくりとした体形で、人間臭い顔立ち、900年頃の初期のモアイ像とされています。この頃のモアイは、タヒチのティキ像に似ているともいわれています。

 この像が発見されたのは1956年、ノルウェーの探検家トール・ヘイエルダールを含む調査団によって。ローカルのガイドが「こっちに来い、いいものがあるから」と誘うけれども、最初は相手にしなかったヘイエルダール。けれど、他のローカルたちが肘でつついて「黙っていろ」と囁くのを聞いて、「もしや……」と。そして案内してもらったところ、1メートルほど頭だけが露出したモアイ・トゥク・トゥリを見つけたのだそうです。

2020.02.01(土)
文・撮影=古関千恵子