五感で味わいたい、京都の四季を表現した会席料理

 客室で外の景色を眺めていたり、パブリックスペースで思い思いに過ごしたりしていると、気づけばもう夕暮れ。今宵はゆっくりと、「星のや京都ダイニング」で冬の滋味を味わうことにしよう。

 「五味自在」をコンセプトにした会席料理は、四季折々の嵐山の情景を表現したもの。真冬には甘みの増す根菜や、丸大根や九条ネギなど土地の野菜、厳寒期を越すために脂を蓄えた魚など旬の食材を使い、滋味を引き出している。

 京都の旅館というと、伝統的な会席料理を想像するかもしれない。でも、日本料理の本質を追求しながらも枠にとらわれないのが、「星のや京都」の斬新なところ。

 総料理長、久保田一郎氏が海外で得た技術や料理法など、自身の経験を自在に取り合わせた一品一品が、運ばれてくるたび、心のなかで歓声をあげてしまう。

 久保田氏は、京都・祇園にある割烹店に生まれ、京都の山川で遊びながら食材を知り、後にフランスやイギリスでも腕を磨いた、豊かな料理経験の持ち主。感性が光る料理の数々を口にしたとき脳裏に思い描くのは、嵐山に着いてからこの宿にいたるまでの情景だ。

 客室でいただく朝食は、部屋着のまま、リラックスして味わえるのがいい。冬は旬の野菜の鍋や、名店から頂いた豆乳を使ったできたての豆腐や、湯葉のサラダなどがずらりとテーブルに並ぶ。ああ、この出汁の香り! 嗅いだだけで朝からお腹が減ってしまう。ボリュームは多いけれど、野菜をふんだんに使っているから、旅で少々疲れた胃にも優しい。

 朝の爽やかな自然を感じながら食べるシチュエーションもまた格別。お腹いっぱい、そして身体の芯から温まったら、チェックアウトの正午まで何をして過ごそう? ひたすら景色を見て過ごすもよし、「水の庭」や「奥の庭」で朝の空気を感じるのもよし。

 たとえ1泊の短い旅であっても、ここでの時間はいつもよりはるかに濃厚に感じるはず。わずかな日数で非日常に浸れる隠れ家は、多忙な私たちにとっては、大切にしたいデスティネーションだ。

星のや京都

所在地 京都府京都市西京区嵐山元録山町11-2
電話番号 0570-073-066(星のや総合予約)
https://hoshinoya.com/

芹澤和美 (せりざわ かずみ)

アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.journalhouse.co.jp/

Column

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2020.01.18(土)
文=芹澤和美
撮影=鈴木七絵