■星野リゾート 星のや京都(後篇)

 国内のみならず海外に至るまで、さまざまなロケーションに魅力的な施設を展開する星野リゾート。その星野リゾートが、今、特に力を入れているのが「ウェルネス」です。

 この連載では、バラエティに富んだアクティビティ、そしてオーガニックな食事などが楽しめる、ヘルスコンシャスなステイを各地からご紹介します。

»星のや京都(前篇)をみる


野点に聞香、京都らしい優雅な遊びを

 京都の旅は、雅な京文化を味わうのも醍醐味のひとつ。とはいえ、街中で試すのは、ちょっと敷居が高い。そんな京都カルチャーを気軽に、そして本格的に楽しませてくれるのが、「星のや京都」のアクティビティだ。

 京文化と聞いてまず思い浮かぶものといえば、茶の湯文化。「星のや京都」だからこそ楽しみたいのが、川沿いという絶好のロケーションを生かした野点体験だ。

 用意されるのは持ち運びができる可愛らしい野点セット。敷地内のどこでも楽しむことができるけれど、特等席はやはり、大堰川にせり出すようにして作られた「空中茶室」。

 目の前の大自然を感じながらいただくお茶は開放的で、難しい作法を知らなくても豊かな気持ちになれる。

 野点に加え、ぜひ試してみたいのが、聞香体験。聞香(もんこう)という聞きなれない言葉は、「心を傾けて香木の香りを聞き、心の中でその香りをゆっくり味わう」という意味。

 京都ならではのこの遊びが始まったのは、室町時代。高価な香木の香りを「六国五味(りっこくごみ)」で表現した優雅で知的な遊びは、戦国時代になると、戦に向かう武士たちのリラクゼーションにも大いに役立ったという。

 このアクティビティでは、希少な伽羅香木や本格的な道具を使い、聞き方、嗅ぎ分け、香りの表現の仕方などを学ぶ。

 まずは、香炉を整えるところから。香炉を片手で回転させながら、火箸で灰を中心に向け掻き上げて山を作り、形を整える。一連のしぐさひとつひとつに意味があり、無駄な動きがひとつもないのは、茶道と同じだ。

 自分で作った聞香炉に香木を置き、右手親指と人指し指の間にできた半月状のすき間に鼻を軽く近づけると……なんともいえないかぐわしさ。これを何度かくりかえしていくと、気持ちがどんどん集中していくのが不思議。

 体験する前は難しく感じていた聞香も、香木のかすかな香りに心を傾け、その香りをゆっくり味わううちに、その奥深さにどんどん引き込まれてゆくはず。これも、この旅で知る新しい世界観だ。

2020.01.19(日)
文=芹澤和美
撮影=鈴木七絵