バンド活動休止は
おもろい人間になるための
“修行期間”

――その後、突然病に倒れる『寝ても覚めても』や、同性の同級生に思いを寄せる『ここは退屈迎えに来て』といった、笑顔の裏に“何か”を抱えたり、厳しい境遇にいる人物を見事に演じられたりするのも、渡辺さんの芝居の魅力といえます。

 「自分にはどういう役柄が合っているか」「こういう役柄をやりたい」といったことはあまり考えないようにしています。どんな設定であれ、その人物を心から愛して演じていますから。同じ世界で生きる一人の人間として、生きているだけで、予想もできないドラマが生まれると思っていますし。

 だから、厳しい境遇の役柄を演じるときも、決して辛いとか大変とかは思いませんね。たとえ、コミックが原作であっても、いち人間として存在したいと考えています。

 ただ今後、人間ではない……たとえばロボットやアンドロイド、あと動物の役がオファーされたら、考えなきゃいけないことが増えるんでしょうね(笑)。

――18年10月には、高校在学中に結成したロックバンド「黒猫チェルシー」の活動を休止されましたが、現在の心境は?

 今は見たことのない世界を作れる、おもろい人間になるための“修行期間”だと思っています。

 別のバンドを組んだり、ほかのバンドのサポートに入ったり、メンバーが楽しそうにやっていて、たとえばドラムの岡本啓佑くんは、13、14バンドぐらい掛け持ちするほどの売れっ子で、休みなく叩いているんですよ。

 そういう姿を見ていると、自分も刺激を受けます。

 だから、休みの日はソロアルバム制作に向けて、曲を作っています。せっかく作るなら、とことん突き詰めていきたいですし、今まで聴いたことのない曲に仕上げたいですね。

2019.11.01(金)
文=くれい響
撮影=平松市聖