阿蘇の自然がもたらす食材を
美しい和会席で
九州のほぼ中央に位置する「星野リゾート 界 阿蘇」は、山海の幸や農産物に恵まれた絶好の場所。それら豊かな土地の食材を、シェフがみごとに仕上げた季節の和会席が楽しみだ。
朝夕の食事は、雄大な阿蘇五岳を一望するダイニングで。
ちなみに、阿蘇山は富士山のような単体の山ではなく、外輪山といくつかの中央火口丘のことを指す。
阿蘇五岳というのは、核をなす高岳(たかだけ)、中岳(なかだけ)、烏帽子岳(えぼしだけ)、杵島岳(きしまだけ)、根子岳(ねこだけ)という5つの山の総称だ。
秋冬のスペシャルメニューといえば、「阿蘇のねたくり鍋」。
「ねたくり」とは、熊本弁で「塗りたくる」を意味する。その名のとおり、鍋の内側に三種類の味噌を塗り、その上から阿蘇小国のジャージー牛乳と鶏がらスープで作った出汁をかけて味わうオリジナルの鍋料理だ。
濃厚な味噌と牛乳がまろやかに溶け合うと、滋味深い味が口いっぱいに広がる。
味噌は赤味噌と白味噌、そして熊本の老舗味噌蔵「山内本店」が作る4カ月熟成の「まぼろしの味噌」を合わせたもの。
湯気のなかでぐつぐつと煮えるのは、和牛のサーロイン。
赤身は柔らかく、細やかにサシの入った肉質は脂っこくなく、上品な味わいがたまらない。
アクセントは、焼いたカチョカヴァロ(チーズ)。火を通すと、もちもちとした食感を味わわせてくれる。
九州といえば、地酒もおいしいところ。地元酒蔵の日本酒や焼酎、熊本県産ワインがメニューにあるのも嬉しい。
食後は、暖炉を囲むロビーラウンジでほっと一息。パチパチと燃える薪の音が、心地よく眠りを誘う。
2019.10.26(土)
文=芹澤和美
撮影=鈴木七絵