一生忘れられない宝物といえる
想い出の作品

――その一方、舞台「銀河英雄伝説」において、キルヒアイスという役と出会います。

 初舞台のときは、記憶がないぐらい緊張していました。幽霊の設定で、そこまで出番が多くなかったのですが、主人公・ラインハルトの親友ですし、目の前には1,200人のお客さんがいましたから、ステージに上がる一歩がなかなか踏み出せなかったことは覚えています。その後、蜷川幸雄さん演出の「ロミオとジュリエット」では、菅田将暉さんが演じられたロミオの従者・バルサザーという役をやらせていただいたんですが、その現場もとても刺激的でした。

――その後、転機になった作品は?

 なかなかオーディションに通らなくて、悩んでいたときに決まった16年のドラマ「闇金ウシジマくん Season3」です。少年院から出てきた荒くれ者ながら、元カノのことを愛しているJPというキャラだったんです。オーディションで酔っぱらっているという設定をもらったときに、ふらふらになるために、ずっと前転をしていました(笑)。それで役を得られて、自分でも「オーディションに受かるんだ」という自信がついて、前向きになりました。

――16年、テレビ西日本でのドラマ放送を経て、映画化もされた「ガチ★星」では競輪の世界に生きる孤高の天才・久松役を演じられました。

 200人ぐらいの一斉オーディションで、僕はエントリーNo.1だったんです。その時は、「久松はまさに自分そのものだから、誰にも渡したくない!」と思っていました。自分しか分からない痛みを競輪にぶつけて生きている久松の姿に共感したこともあり、オーディション中は、ずっと久松になりきっていました。この作品がなければ、いま自分が俳優を続けられているか分からないぐらい一生忘れられない宝物といえますし、この作品に出られたことで、福岡に対する地元愛も強まりました。

2019.04.05(金)
文=くれい響
写真=白澤 正
ヘアメイク=佐々木篤(GLUECHU)
スタイリスト=Stylist JOE(JOE TOKYO)