築130年の古民家で信州の郷土食を

風情のある京風町屋造りの「創舎 わちがい」。玄関には和のギャラリー、奥には売店もあり、見学だけでも可。

 塩の道と呼ばれた長野県松本から新潟県糸魚川にいたる「千国街道」は、日本海側から塩や海の幸、内陸側からは山の幸と、いろんな食材が戦国時代から行き来する道だった。信濃大町は、この千国街道の真ん中にあって宿場町として栄えた。

 かつて塩問屋だった建物が塩の道の歴史を伝える博物館「塩の道ちょうじや」になっていたり、江戸末期に麻を保管した蔵が再生されていたりと、町中に歴史的な建物が残っている。

襖で仕切られた昔ながらの部屋に椅子席。ここからは庭も見え、風情たっぷり。

 郷土の食材を使った和食と地酒の店「創舎 わちがい」は、室町時代からこの地に住む大町年寄十人衆の一角を占める栗林家の住宅を使っている。築130年という京風町屋造りの古民家だ。間口の広さが税金の基準となったため、間口は小さく奥に向かって広がる建物は、オリジナルのままで、とても雰囲気がある。

ざざは温・冷から選べる。小鉢で地酒を一杯、の仕上げにうどんというのもいい。

 名物は「わちがい ざざ」という長野県産地粉を使った生細麺。つるっとした喉越しでコシのあるうどんだ。ざざは、すする音から来ているという説もあり、麺類のこと。信州といえばそばのイメージがあるが、おばあちゃんが家で作るざざは、うどんのことも多い。

 季節の小鉢がつくセットでは、極寒の冬に地中に埋めておいた大根を外に吊し、乾燥させて作った保存食、凍み大根を貝ひも(昔は海の物は贅沢品)と一緒に煮たものや、大町産のおぼろどうふ、越冬野菜のサラダなどといった郷土食を味わうことができる。

創舎 わちがい
所在地 長野県大町市上仲町4084
電話番号 0261-23-7363
http://www.wachigai.com/

 北アルプスに囲まれながら、きれいな空気と水、信州の田舎のよさを、宿や工芸、郷土食を通じて満喫する旅となった。

星野リゾート 界 アルプス
所在地 長野県大町市平2884-26
電話番号 0570-073-011(界予約センター)
https://kai-ryokan.jp/alps/

小野アムスデン道子 (おの アムスデン みちこ)
ロンリープラネット日本語版の立ち上げより編集に携わったことから、ローカルグルメや非日常の体験などこだわりのある旅の楽しみ方を発信するトラベル・ ジャーナリストへ。エアライン機内誌、新聞、ウェブサイトなどへの寄稿や旅番組のコメンテーター、講演などを通して、次なる旅先の提案をしている。
Twitter https://twitter.com/ono_travel

Column

日本を遊ぼう! 星野リゾートで地方の魅力再発見

日本のさまざまな地方の隠れた魅力を掘り起こし、プロデュースすることで日本の観光に一石を投じてきた星野リゾート。全国に展開されているその各施設を訪れ、その地ならではの遊び方、旅の仕方を再発見していきます。グルメ、自然、伝統工芸……、思いっきり日本を遊ぼう!

2018.04.22(日)
文=小野アムスデン道子
撮影=鈴木七絵