■星のや京都(前篇)

 日本の地方の魅力を掘り起こし、プロデュースすることで日本の観光に一石を投じてきた星野リゾート。その各施設を訪れ、地方らしい遊び方、旅の仕方を再発見していこうというシリーズが「日本を遊ぼう!」。

 今回ご紹介するのは、「星のや京都」。嵐山の四季を愛でる伝統の旅館で、芸舞妓さんとのトークなどに興じ、他にはない非日常の時間を楽しみます。

嵐峡に小舟で分け入れば
星のや流の風雅なお出迎えが

「星のや京都」の早春のプログラム“花街サロン”で舞を披露する舞妓の市こまさん。

 多くの人が行き交う嵐山の渡月橋。そのたもとに「星のや京都」の舟待合が佇む。

 宿に向かう小舟を待つ間、2階に通される。障子越しに入る柔らかな光が心地よい。その昔に宿場として栄えていた頃の旅の疲れを癒す一服、お香煎(漢方薬の原料を使ったお茶)が出される。旨みを感じる深い味わいだ。

非日常の旅への短い舟旅。冬は、席に湯たんぽと毛布が置かれ、暖かいおもてなし。

 ここから保津川下りの舟が行き交う川を上ること10分。短い舟の旅が、非日常の時間へ気持ちを切り替えてくれる。やがて見えて来る風雅な建物。角倉了以(すみのくらりょうい)という戦国時代随一の豪商が居を構えた場所だけあって、桜の木が飾る川辺を見下ろす眺めは抜群だ。川向こうには名物のトロッコ列車が走る。

嵐峡の眺めは、四季それぞれに風情がある。
さすが豪商の別邸が建っていただけあって素晴らしい眺め。

 2つの滝が流れ落ちる「水の庭」で奏でられる神秘的な音楽がゲストを迎える。全25室の建物は、100年前に建てられた旅館の風情を残しつつ、今に生かされている。すべての客室から川が眺められ、京唐紙など伝統工芸を用いながらモダンに仕上げられていて、居心地がよい。

特別室の「月橋」。
「月橋」は目の前が川。広々した空間に置かれた家具も絵になる。

 そのほかに、お茶を一服して自由に時間を過ごせる「ライブラリーラウンジ」、聞香や投扇興など日本の遊びを楽しめる「和室パブリック」、ダイニング、そして蔵を改装した「Salon & Bar蔵」、風紋のような造型が美しい「奥の庭」と、風情ある雰囲気に浸ることができる。

自由にお茶やお菓子などがいただけるライブラリーラウンジ。
屋外には目の前のせせらぎが心安らぐ空中茶室も。
川の流れのような造園が美しい「奥の庭」。眺めて時間を過ごす席も設けられている。

2017.12.30(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=橋本 篤