「肉を食らう」という言葉が似合う
ステーキを噛み締める幸せ
ステークフリットの香ばしく焼かれた肉を切れば、一面ロゼ色で、噛めば肉汁がしたたり落ちる。まさしく「肉を食らう」という言葉が似合う、噛みしめる幸せを運ぶステーキである。カリッと香ばしくあげられたばかりの、フライドポテトも芋の甘みに満ちて上等。
そしてケラーシェフのスペシャルティである若鶏のロティは、皮はパリンと焼き上がり、中はしっとりと肉汁をたたえた素晴らしい仕上がりで、キノコ仕立てのソースが素晴らしい。ひよこ豆、ニンニクの茎、アーティチョークが添えられている。
さらにラムやジゴダニョー(羊モモ肉、質が素晴らしい!)など、いい意味でひねりのない、味わいと加熱に舞い上がって、ソーセージまで頼み、いくら隣席のそれがおいしそうだからと、クロックマダム(ハムの味わい、ブリオッシュ生地のパンすべてが正道)まで頼んでしまった。
また、隣のパン屋から焼きたてのエピが運ばれるので、これまた手が止まらなくなる。
こうして、ビストロのビストロたる料理に、ビストロたる食欲とオーダーで対応し、太鼓腹をさすりながら、少し反省するものの、満面の笑顔で店を出るのである。
Bouchon(ブション)
所在地 6534 Washington St, Yountville, California
電話番号 707-944-8037
営業時間 月~金曜 11:30~24:00、土・日曜 11:00~24:00
https://www.thomaskeller.com/bouchonyountville
マッキー牧元(まっきー・まきもと)
1955年東京出身。立教大学卒。(株)味の手帖 取締役編集顧問 タベアルキスト。立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く。「味の手帖」 「銀座百点」「料理王国」「東京カレンダー」「食楽」他で連載のほか、料理開発なども行う。著書に『東京 食のお作法』(文藝春秋)、『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)、『ポテサラ酒場』(監修/辰巳出版)ほか。
Column
マッキー牧元の「いい旅には必ずうまいものあり」
立ち食いそばから割烹、フレンチからエスニック、スイーツから居酒屋まで、全国を飲み食べ歩く「タベアルキスト」のマッキー牧元さんが、旅の中で出会った美味をご紹介。ガイドブックには載っていない口コミ情報が満載です。
2017.11.19(日)
文・撮影=マッキー牧元