〆は天丼か天茶か、迷うことしきり!

 烏賊、椎茸など定番を味わったあとは、ひと塩して山椒の佃煮を挟んで揚げたカマスが登場。

魚介と野菜をバランスよく提供。
和食の技法をちょっとひねって取り入れるのがうまい。

 小柱と三つ葉のかきあげ、インゲン3本を海苔でまとめたもの。

見目麗しい緑が食欲をかきたてる。

 口替わりの中鉢として、蓴菜(ジュンサイ)や海老の酢のものが出てきた。これがまた、ちょうどこういうのが欲しかったというタイミング。

このあたりも35年のキャリアなのかなぁと。

 おっ、鮑だ! 肝塩で食べるとまたうまい。生麩は「天つゆたっぷりで召し上がってください」の指導通りにいただく。これもいい塩梅。

肝塩は自家製。塩は沖縄産を使用。

 アスパラと万願寺とうがらし。初夏を満喫。

まだまだ胃袋は動きっぱなし!

 帆立に海苔を巻いたもの。フィニッシュは王道の穴子だ。

穴子に箸を入れる瞬間のサクッがたまらない。

 シャーベットで口直をし、〆は、勝どき時代からのシグネチャーである、小海老のみを使ったかきあげ。それを、天丼か天茶で提供する。今回は丼つゆの味を確認したくて丼にしてみた。甘過ぎず、きれのいい丼つゆ。お腹はいっぱいだが、するっと入ってしまう。

小海老のかきあげは、ぷっくり。大輪の花のような美しさ。

 献立は、毎日市場に足を運び、そこで素材選びをするところから始めていくという。「天ぷらを含め、20品ぐらいは出そうと思っています」と新垣氏。天ぷら職人のみならず、長く日本料理の世界にいたからこそ提供できる味が並ぶ。

 さらにデザートも付く。カラメルではなく黒蜜をかけた黒糖プリン。これがまた特筆すべきうまさ。隣席の紳士は「これだけで商売してもいいくらい」と絶賛。

そして、誰もが同意とうなずいた。

 新垣氏の「こうしたほうがおいしいと思うから」がちりばめられたコースは、14,000円(税別)。奇をてらわない、しかし、丁寧な仕事ぶりが随所に感じられ、満足度の高いものだった。そこで8月初旬に貸し切りの予約を試みたが、なんと、オープンしたばかりにも関わらず、結構先まで予約が入っているではないか!

 なんとか6名分の席を確保。真夏はどんな素材で魅せてくれるのだろう。その時の〆は天茶にしようかな、別添えの“ヌキ”にしてもらうのもいいな、などと、こうして原稿を書いている今も妄想を膨らませてしまっている。

旬恵庵 あら垣(しゅんけいあん あらがき)
所在地 東京都中央区湊3-5-10
電話番号 090-7716-4125
営業時間 17:00~20:00(最終受付)
定休日 不定休
料金 ディナー 14,000円~
[2017年6月訪問]

Keiko Spice(けいこ すぱいす)
東京都生まれ。得意なディスティネーションはハワイと香港。普段は3日に1回のペースで焼肉を中心とした食生活。別名「肉の妖精」。

Column

新店来訪! 美味しい出合いに一番乗り

ニューオープン、シェフやメニューが変わった店、面白い企画を立ち上げた店……などなど、なにかと「新しい」店を一番乗りで紹介するページ。「美味しい出合い」にご注目ください!

2017.07.17(月)
文・撮影=Keiko Spice