みなさんフレンドリー
さて、毎日はこんな様子で過ごしていました。
朝9時に家政婦のマルガリータが朝食を作りに来てくれるのでそれを食べてから、散歩に行きます。一度戻って読書や昼寝をし、午後からは美術館や海岸など少し遠くまで外出。疲れたら、カフェやバーでモヒートやフローズンダイキリなど。夜は、歩いていける範囲のカフェやレストランへ。
こちらでは夜も昼も、どこからか音楽が流れてきます。お店ではバンドの演奏も。だから滞在中、有名な曲「Chan Chan」などは何十回も聴いた気がします。最後の夜もバーにいると、バンドがやってきたのでこの曲の演奏をお願いしました。
また、こちらではみなさんフレンドリー。
道に迷っている様子をみると、すぐに声をかけてくれるし、日本人だとわかると「空手習ってるんだ」とか「いとこが日本人と結婚して熊本に住んでいる」など話しかけて来ます。英語もまだ初心者な私ですが、スペイン語を少しでも習ってから行けばもっとコミュニケーションが取れたなあとちょっと残念に思いました。治安はとてもよく、真夜中でもたくさんの人たちがお酒を飲んだり歩いたりしています。
タクシー運転手や土産物屋の人もしょっちゅう声をかけてくるけれど「いらない」と言えば、しつこくされることもありません。
最終日の早朝4時に出発する私たちのために、Airbnbのオーナー夫妻がお別れを言いたいとわざわざ来てくださり、予約したタクシーが来なかったため(こいういうところは適当だったりします)、空港まで送ってくれました。
ネット環境は悪く、国営の通信企業ETECSA(エテクサ)で買うWi-Fiカードが頼みの綱。しかしここが朝から大行列。そして売り切れる場合もあるそう。到着3日目に、行列の少ないETECSAを見つけ、ようやく手に入れることができました。しかしWi-Fi利用可能な場所(大きなホテルなど)が少ないのです。
でも見つけるのは簡単。とにかく大勢の人たちがその近辺に座り込んでスマートフォンをいじっているので。まるでポケモンGOのポケスポットのようです。
レストランやカフェの食事はローカルフードかイタリアンですが、だいたいおいしくない、あるいは「まあおいしいかも」ぐらい。それを予想していたので、夫は現地で食材を調達して料理するのを楽しみにしていたのですが、スーパーマーケットには生鮮食品はゼロ、地元の人たちの小さな市場で野菜や豚肉を買って、一度だけ夕食を作っただけとなりました。
クレジットカードが使えない、ネットがつながらない、食材など日用品が手に入りにくい、お金の両替も大変……私が今まで行った国の中で、だんとつに遠くて不便なことも多かったけれど、それを差し引いても、楽しくて心の底からくつろげる国でした。三拠点生活も、この春で丸2年になるので、ペースをまた変えながら、夫と四拠点目的な「暮らすような旅」を続けたいなあと思っています。
松尾たいこ(まつお・たいこ)
アーティスト/イラストレーター。広島県呉市生まれ。江國香織との共著『ふりむく』、角田光代との共著『Presents』などがある。数多くの書籍装画や広告の他、六本木ヒルズのグッズパッケージなども手がける。2014年より「千年陶画」プロジェクトで陶器作品の制作を開始。2016年「ブータン しあわせに生きるためのヒント」展(上野の森美術館)のアートディレクションを担当。東京、軽井沢、福井の3カ所を拠点に活動中。夫はジャーナリストの佐々木俊尚。
公式ブログ http://ameblo.jp/taiko-closet/
公式サイト http://taikomatsuo.jimdo.com/
Column
松尾たいこの三拠点ミニマルライフ
一カ月に三都市を移動、旅するように暮らすイラストレーターの松尾たいこさんがマルチハビテーション(多拠点生活)の楽しみをつづります。
2017.02.25(土)
文・撮影=松尾たいこ