ブータンのガイドさんが行きつけのレストランでいった一言

『空が高かったころ』松尾たいこ・絵と文(ポプラ社)から。

 年末に仕事でブータンに行ってきました。ほとんどブータンについてはなにも知らなかったので、行く前に少し勉強。

 ざっくり「ブータンはインドと中国の間にあり、九州ぐらいの大きさ」、「人口は70万人(大田区民ぐらい)だそう」、「幸福度が世界一の国」というようなミニ知識だけを身につけ、行きの飛行機で数冊のブータン関係の本を読みました。

 でも本を読んだだけではピンと来なかった「幸せの国 ブータン」という言葉、わずか4日間ブータンにいただけの私にも少しだけ「ああ、そういうことだったのか」と思えるようになりました。

山の上から見たブータンの首都ティンプー。谷間に広がり、低層の建物が多い。

 ブータンでは旅行者には必ずドライバーとガイドがつきます。もちろんガイドさんは日本語ペラペラ。どこにでも連れて行ってくれます。

 ある日の夕食、ガイドさん行きつけの地元のレストランで一緒にテーブルを囲みました。その時に彼のいった言葉が私の中にすごく染み込んできました。

「私は世界一幸せだと思っています。仕事があり、それはお金を得るだけでなく自分の知識にもなります。家族と過ごす時間も大切にしています。両方が人生に大切です。小さな国だからこその共同体。その中で私たちに何ができるか常に考えています。足るを知ることも必要です。今、幸せかどうか。それは自分の心が決めること」

 そう、彼らの幸せ度は誰かとの比較ではないのでした。

人々の信仰心は厚く、メモリアル・チョルテンには平日にもかかわらず多くの参拝客が。

 カルチャーショックもありました。

 レストランに行き、席に着く前に私はダウンコートと帽子、マフラーを取りました。するとドライバーさんが「暑いの?」って聞くんです。ふと見渡すと、周りの方々は外と同じ服装で帽子とマフラーをしたまま食事。店内には暖房が付いてないので、寒いんですよね。暖房が入っているのを前提にして無意識に上着を脱いでいた自分が、ちょっと恥ずかしくなりました。

ゾンは県庁兼寺院。多くのお坊さんが修行をされている。民族衣装のキラを着て一緒に撮影。

2016.01.30(土)
文・撮影=松尾たいこ