花嫁学校のようなアルビオンのBA教育
例えばアルビオンのBA教育は、まるで花嫁学校のように、女性として“どこに出しても恥ずかしくないお嬢さん”を教育していくようなスタンスが昔からあったと言われる。それを何度もの合宿で鍛えていくのだが、それこそ箸の上げ下ろしまでに至る躾のような教育をされるもの。高級品を売るものは、上質な人間でないといけないという哲学があるからこそ、“売る以前の教育”がしっかり成されるのだ。
そしておそらく今回の映画で一番大切に描かれたのは、研究者から商品開発、全てのスタッフに至るまでが、アルビオンの商品をまるで命あるもののように慈しみ、愛していること。アルビオンはトレンドとは別のところで強烈なこだわりを持って商品を作っている。それは「今すぐその後でキレイが見えること」。何を作るのでも、その一点にこだわっている。理屈ではない効果を作る情熱がそっくり込められるのだ。
アルビオンの社長の著書に『感動に不況はない』という一冊があるけれど、ここはひたすら感動をテーマとしていて、それがこの映画にも一緒に描かれ、最終的に見る側が感動するような作りになっているよう。
当初は、化粧品が題材だけに女同士のドロドロした世界を描こうとしたらしいが、脚本家がアルビオンに取材をしているうちに、方向が変わってきたとも言われる。サスペンスチックでありながらヒューマンドラマ、そしてブランドドラマである以上に化粧品とは何か考えさせられる。良いものとはどうやって作られるのかというものづくりの精神もそこに描かれている。いい映画だ。女性が仕事をしていく上で、何が重要か、やりがいとは何なのかまで、教えてくれる。キレイになりたい人も、どう生きるべきかに悩んでる人も、観て欲しい。
『コスメティックウォーズ』
(C)2017「コスメティックウォーズ」製作委員会
2017年3月11日(土)ロードショー
http://www.cosme-wars.com/
齋藤薫 Kaoru Saito
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)、『大人になるほど愛される女は、こう生きる』(講談社)、『Theコンプレックス』(中央公論新社)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数。
Column
齋藤 薫 “風の時代”の美容学
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。
2017.01.15(日)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫