スキコンなんて
誰も真似できないものなのに
実在の企業を舞台にしたドラマや映画はあっても企業の本質がきちんと描かれながらも、物語として引き込まれるサスペンス仕立てになった映画は、稀かもしれない。
これは、実話ではない。でも実際にあってもおかしくないストーリー。化粧品会社アルビオンに、処方を盗みに来る企業コンサルタント、つまり産業スパイが主役である。化粧品業界でもそんなことがあるの? これについては噂を聞いたことがあるような、ないような。
正直、化粧品は既存の処方を盗む暇があったら、むしろ新しい手法を自分たちで編み出していったほうが早いはずだが、なるほどと思ったのは、スパイまで使って処方を盗もうとしたのは実在の化粧品、ご存じスキコン。確かに化粧品業界の七不思議の一つと言われるほどなぜこんなに売れるの? なぜこんなに長く愛されるの? それこそ業界全体がその謎を知りたがっている。
つまりはこの製品が主役になっていることで信憑性が生まれ、ドラマの重厚感が増している。もっと言うなら、スキコンが売れる理由はもっと化粧品としての本質的なこと。処方や成分を真似ても、そこのところに気づかないと全く意味がない。化粧品とは何なのか? 人を惹きつける化粧品の正体とは何なのか? スキコンのコピー商品は世の中にいっぱいあるが、決して成功はしていない。やっぱりこの製品にはどうにも真似できない奥深い魅力があるのだ。
ましてや、アルビオンというブランド自体が、七不思議の一つ。海外の有名ブランドで「日本のアルビオンはなぜ商品が売れるのか?」解明せよ、という特命が下ったりするらしい。実はこの映画の中に答えになるものがいくつか見つかるのだ。
2017.01.15(日)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫