【WOMAN】
ひとりで暮らしひとりで生きる
人々のこころを捉えた群像劇

 本をめくる。針を布に通す。日常で当たり前に起きる出来事を、繊細な心情描写を積み重ねた先でダイナミックに出現させ、驚きと感動を与えてきた漫画家・池辺葵。『プリンセスメゾン』では、東京に暮らす26歳の居酒屋店員・沼ちゃんの家探しを描きながら、彼女と触れ合いすれ違う人々に訪れる一瞬を次々出現させている。

 温かな繫がりに満ちた職場から、一人暮らしの部屋に帰った刹那に訪れる、寂しさの一瞬。友達に恵まれ鼻歌交じりのハッピーな日々の中で、「私、いつ死ねるんだろう」とぽつりと呟く一瞬……。自分はなぜ、この街で暮らし、この家に住んでいるのか?

 最新3巻では、沼ちゃんが家の契約書にハンコを押す。その一瞬のアクションにこんなにも感動してしまえるのは、そこに彼女の人生観が全部乗っかっているからだ。未来を想像して不安になるなんて意味がない。大事にしなければならないのは今、この一瞬の自分の気持ちなのだ。

『プリンセスメゾン』(既刊3巻) 池辺 葵

居酒屋の社員・沼越幸は、終の住処にはならないかもしれないし、もしも結婚したら手狭になるかもしれないけれど、今の自分の気持ちに従って、一人暮らしの家を買うことを決める。彼女の情熱に触れた、周囲の人々の心も揺れ動き……。「やわらかスピリッツ」連載中。
小学館 552円

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Column

男と女のマンガ道

男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!

2017.01.06(金)
文=吉田大助

CREA 2017年1月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

ゆるむ、台湾。

CREA 2017年1月号

食べてのんびり、また食べる
ゆるむ、台湾。

定価780円