土屋太鳳は本当の姉のような存在

――当時の印象深いエピソードがあれば、教えてください。

 いっぱいありますが、田中裕子さんと田中泯さんとのシーンが多かったので、とても勉強になりました。それに後半にあった、僕が泯さんに製塩業を継ぐ気持ちを伝える長回しのシーンですね。僕は感情が高まって自然と涙が出てきたんですが、泯さんが「泣かされたよ」と仰ってくださったんです。泯さんは自分で納得がいかないかぎり、芝居では泣かないというようなことを仰っていて、そのとき嬉しい気持ちと同時に、もっと芝居を頑張っていこうという気持ちになりました。

――ちなみに、お姉さん役だった土屋太鳳さんとは『青空エール』で再共演。そのときは吹奏楽部の同級生役で、彼女と衝突する役でしたが、いかがでしたか?

 太鳳ちゃんのことを本当の姉ちゃんのように思っているんです。だから、役柄上ではあまり会話をしなくても、カットかかった瞬間にいっぱい喋るみたいな(笑)。「まれ」の撮影が終わってからも、かなり連絡を取っていて、自分が困ったり、しんどかったりしたときには太鳳ちゃんに連絡するんです。太鳳ちゃんも忙しいなか、長文でメールを返してくれるんですが、それを読むと、自分の考えていることが、どれだけ小さいことかと思いますね。

――さて、最新出演映画『アズミ・ハルコは行方不明』ですが、中学時代の同級生に巻き込まれながらも、アーティストとしての才能を開花させていく学の役作りは?

 この作品に関しては、特に役作りみたいなことはしなかったんです。(監督の)松居さんが「あまり演技プランを固めなくていい」と仰ってくださったこともあります。それにスゴく感情的でハッキリしたキャラを演じているみっちゃん(高畑充希)と太賀くんと一緒にいることで、勝手に引っ張ってもらって、学というキャラが出来上がっていった気がします。

2016.12.09(金)
文=くれい響
撮影=深野未季