蒼井優が8年ぶりに単独主演する映画『アズミ・ハルコは行方不明』を手掛ける、松居大悟監督。『私たちのハァハァ』など、リアルかつ活き活きした若者の姿を描くことに定評がある映像作家が、自身の創作活動の原点について語る。

マンガ家~お笑い芸人を目指した学生時代

――幼稚園から小学校低学年まで、ぬいぐるみ遊びをすることを好んでいたそうですが、それはなぜですか?

 兄貴には、友達がいっぱいいたんですが、僕は一人で遊ぶのが好きだったんです。それで親に買ってもらったぬいぐるみに、勝手に名前を付けて、物語のようなものを作っていました。気付けば、ベッドの半分ぐらいがぬいぐるみで占められていましたし、旅行に行くときも一緒に連れて行くようなお気に入りもありましたね。

――その後、マンガ家を目指されますが、きっかけになった出来事や作品は?

 小学校に入って、学校ではぬいぐるみ遊びができないので、自由帳に絵を描き始めるという新たな遊びを見つけたのがきっかけで、絵を描き始めました。その後、うすた京介さんや、つの丸さんのギャグマンガを読んだときに、何も知らない自分は「これなら、自分も描けるんじゃないか?」と思い、マンガ家を目指すようになりました。そんなに甘いものではなかったですが、高校まで描いていましたね。

――高校では、同時にお笑い芸人として、M-1グランプリを目指されたそうですね。

 高校のとき、下ネタを言い合って、ラーメンを食べに行くような隅っこグループにいて、その中で漫才コンビを組んで、M-1グランプリに出ようという話になったんです。「クラスの人気者の奴より、絶対に俺たちの方が面白いぜ!」って。でも、全然ウケなくて、結果も出なくて(笑)。それで「何が足りない?」と考えたときに、演技力を磨くというところに落ち着いて、それぞれの大学で、演劇サークルに入ることを決めました。ちなみに、その相方は僕より圧倒的に絵がうまくて、今ではアニメーターになりました。

2016.11.25(金)
文=くれい響
撮影=深野未季