ここは東洋か西洋か。そんな感覚に陥るホテル

「石山離宮 五足のくつ」は全室に内湯のほか、森の中のスパのような露天風呂を完備。

 「アジアの中の天草へようこそ」。そんな言葉で迎えられるホテルは、下島の深い緑の中にある。「石山離宮 五足のくつ」は、天草が歩んだドラマティックな歴史を随所で感じられるスモールラグジュアリーだ。

天草=海というステレオタイプのイメージをくつがえす森の中のホテル。

 全室露天風呂付きのゲストルームは3タイプ15棟のヴィラからなり、それぞれが山の中腹に点在。ヴィラAは昔の漁師町、メゾネットタイプのヴィラBは天草の未来、そしてヴィラCは、キリスト教が伝来した16世紀の天草がモチーフとなっている。すべてのヴィラはインテリアも雰囲気も異なり、どの部屋にしようか迷ってしまうほど。

和室と東シナ海を望む露天風呂があるヴィラAのゲストルーム。
ヴィラBの天蓋付きベッドのあるゲストルーム。猫足のバスタブでリラックスする窓の外には美しい緑が。

 ヴィラA、Bのゲストのチェックインは「ヴィッラコレジオ」と呼ばれる建物で。コレジオとは、16世紀の天草にあった、宣教師を養成する学校のこと。長崎を出航し、長い航海を経てローマ教皇に謁見して帰国したカトリック教徒の4人の少年、天正遣欧少年使節も帰国後、天草のコレジオで学んでいる。

レセプションがあるのは、純日本風の本瓦を用いながらステンドグラスをあしらったヴィッラコレジオ。エキゾチックで、到着早々、昔にタイムトリップした気分。この棟に、書籍やCD、DVDを揃えたライブラリーとバーもある。

2016.08.08(月)
文・撮影=芹澤和美