歴史を感じる和洋折衷の小さな旅館
下島の西海岸にある高浜地区は、ところどころの家の軒先に高浜ブドウが育つ静かな住宅街。ウミガメも産卵にやって来る美しいビーチに恵まれたここには、文化を薫らせる一軒の宿がある。
右:部屋は全て和室。ふすま一枚にも歴史を感じる。
「旅館 白磯」は、1937年築の和洋折衷の邸宅を利用した宿。この建物の初代の主は、赤崎伝三郎。この地に生まれ、一旗揚げようと、上海、香港、ベトナム、シンガポール、インドを転々とし、たどり着いたマダガスカルでフランス人相手に開いた酒場が大成功。その後、現地で高級ホテルや映画館、レストランなどを営んだ後、帰国して故郷にこの家を建てた実業家だ。
彼は1946年に77年の生涯を終えたが、その4年後、建物は旅館としてオープン。昭和初期に建てられた家は一部改装しているものの、雰囲気は当時のまま。和風の母屋にある洋風の応接スペースや洋館にあしらわれた漆喰の装飾が、歴史を感じさせる。
右:昭和天皇が休息をとられた部屋にも泊まることが可能。
客室は3部屋のみ。洗面所やお風呂などは共用、最新の設備はないけれど、丁寧に手作りされた食事はおいしく、この空間に滞在することがなによりの楽しみとなる。畳敷きの部屋でのんびりとくつろいで、歴史に思いをはせながら中庭を眺める静かな時間を、慈しみたい。
旅館 白磯
所在地 熊本県天草市天草町高浜南2725-3
電話番号 0969-42-0021
【取材協力】
上天草市 観光おもてなし課
電話番号 0964-26-5512
URL http://www.city.kamiamakusa.kumamoto.jp/q/list/129.html
天草市
URL http://www.city.amakusa.kumamoto.jp/
一般社団法人 天草宝島観光協会
URL http://www.t-island.jp/
芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオ ノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn
ほっこりドラマティックな天草へ
2016.08.08(月)
文・撮影=芹澤和美
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