仁左衛門から得た一生の宝
――気持ちとスキルの融合は常に直面する課題なのでしょうね。竹藪での場面は歌舞伎の代表的な立廻りのひとつで大きな見どころですね。
立廻りそのものは純粋に気持ちよかったです。手負いであることに特徴があり、若衆らしい色気や憂いが必要な役なので、それを意識しながら勤めました。命果てる寸前に仕えていた御台様と若君を送り出すのですが、そこではいろいろなことを考えさせられました。また演らせていただける機会があったら、その時は別の気持ちでやってみたいとも思いました。ただそれを具体的に話したくないのですが……。すみません。
――いえいえ、次に拝見できた時にどのような小金吾となるか楽しみにしたいと思います。そんなふうにいろいろなことを考えたくなる役なのですね。
はい。とにかくしどころのある役だと思いました。
――立廻りに至る前、小金吾は茶店で出会った権太にお金を騙し取られてしまいます。権太を演じていらしたのはこの役を何度も勤められている片岡仁左衛門さん(人間国宝)でした。相対してみての実感は?
もう仁左衛門のおにいさんが偉大過ぎて……。自分がどう出ようとも受け止めてくださるので何のためらいもなく小金吾として突っ込んでいけました。
――小金吾にとっては初めての出来事だけど、権太にはよくある日常の風景。もはや役を楽しんでいるかのような余裕をも感じさせる仁左衛門さんの懐に、真正面から向かっていく左近さんの姿を清々しい思いでご覧になっていた方も多いと思います。
ありがたいことに去年は歌舞伎座で通し上演された三大狂言すべてに出演させていただきました。そしてどの作品でも仁左衛門のおにいさんのそばで重要な役を勉強させていただけたのは、自分にとって一生の宝です。
――三大狂言とは『仮名手本忠臣蔵』『菅原伝授手習鑑』『義経千本桜』。左近さんは『仮名手本忠臣蔵』では大星力弥、『菅原伝授手習鑑』では苅屋姫を演じられ、どちらも仁左衛門さんとは親子の役。
とにかくおにいさんが勤められる役に対する人物としてちゃんとそれらしく見えるように、という思いでした。
新春浅草歌舞伎
2026年1月2日(金)~26日(月)
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/other/play/951
團菊祭五月大歌舞伎
2026年5月3日(日・祝)~27日(水)
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/969
Column
今こそ、歌舞伎にハマる!
エンタテインメント性に優れた展開にわくわくドキドキしたり、音楽や詩情豊かな表現の芸術的センスに魅了されたり、物語の奥深い内容に深く感動したり、身体パフォーマンスとしての表現力に圧倒されたり、そして伝統芸能に宿る日本の風情や日本人の心情に感じ入ったり……。歌舞伎という演劇が内包する魅力をさまざまなアプローチでご案内していきます。
