もうダメだと思った時、一度立ち止まって考えることができた

――頑張ってもうまくいかない、立ち直れないなど、壁にぶつかることもありますか?

 あります。19歳でNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」に出演したあと、一気に有名になって、自分を見失いました。期待に応えたい気持ちと、自分の未熟さとの間で揺れて、気持ちが追いつかなくなってしまったんです。まだ芝居も何もできていないのに、注目だけが高まり、「こんなにできない自分を見ないでほしい」と自己嫌悪の日々でした。

 そこから立ち直れたのは、一度休ませてもらったおかげだと思います。もうダメだ、と思った時は一度立ち止まり、自分が本当にやりたいことを考えて、そして自分で「やる」と決めることが必要だと思います。

――福士さんもその時、俳優をやめようと思われたのですか?

 はい。20代半ばくらいの時に一度、仕事をやめたいと思ったことがありました。忙しすぎて自分を見失っていたので、自分を取り戻そうと3カ月間お休みをいただき、アメリカに行きました。

 アメリカでは英語やお芝居の勉強もしつつ、基本はのんびりする、という生活を送りました。自分と静かに向き合う時間を得たことで、もう一度“俳優を続けたい”と思えるようになりました。

 もしあの時勇気を持って休まなければ、今頃俳優という仕事をやめていたかもしれません。今はすごくポジティブに俳優という仕事に向き合えています。

――休むにしても続けるにしても、「自分で決める」ということが大事なのですね。

 そうですね。人にやれと言われて選んだことは、ストレスや苦痛を感じますが、自分で選んだことならそれほどストレスにはならないと思います。たとえできなくても、自分で選んだことなら「できるようになるにはどうしたらいいか」と考えると思いますし……。この繰り返しが、次のステップに進む布石になっていくのではないかと感じています。

次のページ 自分にとっては20代も30代も変わらない