マリリンの墓参をするディマジオの写真を撮れば、芸能誌の恰好な題材となり高く売れる。日中は墓参りの人も多く、パパラッチが混じっていることもあり、彼はいつも夜、墓参りするようにしていた。

ディマジオが守り続けた約束

 マリリンはサンフランシスコでの結婚のときに、枯れかけた白い蘭のブーケを見て、「もし私が先に死んだら、毎週花を届けてくれる?」

 とディマジオに言ったそうだ。

 マリリンがそう言ったのは、女優としてのロールモデルでもあった伝説のプラチナブロンド、ジーン・ハーロウを意識したからだ。

 婚約中のウィリアム・パウエル(当時を代表するダンディな二枚目スター)と結婚する直前に、たった26歳で急死したジーン・ハーロウ。ウィリアム・パウエルはハーロウの横に墓地を求め、くちなしの花を欠かさなかったという。

 自分とハーロウを重ねた、彼女らしい何気ない一言。それを守ったディマジオの誠実さには頭が下がる。

 ディマジオはスポーツマンで、小説などを読みふけるタイプではない。

 結婚当初、マリリンが純金の鎖に刻んでプレゼントした、サン・テグジュペリの『星の王子様』の引用が、全くわからなかったというのは有名な話だ。

 「大切なものは心でしか見えない」という名言を、確かにディマジオは、そのときすぐにはわからなかったかも知れない。しかし彼は、まさにその美しい言葉の本質を、マリリンの美しさを、見抜いていた人だったと思う。

 彼のDVやマリリンの家に盗聴器を仕掛けた話など、後年ネガティブなことがたくさん書かれたが、たとえそれが全部本当のことであったとしても、それは彼の愛だったのだと思う。

マリリン・モンロー 100年の孤独

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