【1976】3度目のブームになった多情婦“阿部定”事件

 1936年、性行為の最中、男の求めに応じて首を絞め、絶命した恋人の局部を切り落とし、奪って逃走した阿部定の犯行は昭和の猟奇的事件として語り継がれ、3度もブームになっている。

 事件当時と戦後のカストリブームの頃、そして『エマニエル夫人』の2年後、1976年に映画『愛のコリーダ』が公開された時、とそのたびに事件内容が改めて脚光を浴びたのだ。

 しかもその後50件以上も局部切断事件があったとされるが、ほとんどは男の不貞を女が恨んでの犯行とされる。唯一“復讐のためではなかったから”こそ、多情婦・阿部定はカリスマ的な捉えられ方をされたのだろう。

【1976】『ハイト・リポート』は日本女性の何を目覚めさせたのか?

 全米の14歳から78歳までの女性約3000人の回答を詳細に分析。女性たちの性の実態を明らかにしたレポートは、1976年の出版当時、世界的に大反響を巻き起こす。

 60年代までキリスト教の影響から性に保守的だったアメリカで、口にするのもタブーだった性生活の全てを一人一人が生々しいまでに自分の言葉で語った訳で、歴史上初めて“他者の場合”を知ることが女性たちにどれだけの勇気や喜びをもたらしたか計り知れない。

 何より重要なのは、性において女性が優位に立つきっかけを与えたこと。性的にも男尊女卑を強いられていた日本女性に光を与えたのは言うまでもない。

齋藤 薫(さいとう かおる)

女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌で多数のエッセイ連載を持ち、CREAには1989年の創刊以来、常に寄稿している。最新刊「年齢革命 閉経からが人生だ!」(文藝春秋)が好評発売中。

Column

齋藤 薫 美容脳ルネサンス

美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤 薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。

CREA 2025年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

「誰にも聞けない、からだと性の話。」

CREA 2025年秋号

「誰にも聞けない、からだと性の話。」

定価980円