この記事の連載
映画『おーい、応為』長澤まさみさんインタビュー #1
映画『おーい、応為』長澤まさみさんインタビュー #2
感性で演じられるようになりたい
――北斎を演じた永瀬正敏さんとは初共演です。いかがでしたか?
長澤 永瀬さんは真っ直ぐで、四六時中役のことを考えているような方でした。北斎になろうとされて、途中からは本当に北斎になっているように見えるくらい。その集中力や情熱に助けていただきながら親子を演じさせてもらったのはありがたいと思っています。
現場では優しいお気遣いでまわりを包み、「家族」という言葉を口にしなくてもファミリー感を醸し出してくださる方で。安心して場に浸ることができました。

――応為を演じて、どのような手応えを感じていますか?
長澤 純粋に絵を描き続けた応為を演じて、“演じる”ということに対して、その時感じることにもっとピュアに素直にやっていきたいと思うようになりました。頭で考えすぎず、感性で演じられるようになりたい、と思いました。
時代劇だからと気負わずに
――完成した映画をご覧になって、いかがでしたか?
長澤 本当にいい親子の物語だなと感じました。北斎と応為の生活を覗き見しているような、2人のドキュメンタリーのような映画で、じんわり心に響きました。
――自分らしく生きる応為の姿に励まされる作品だと思います。
長澤 そう言っていただけると嬉しいです。江戸時代に女性が浮世絵師として活躍するのは、珍しいことだったと思います。でも応為は自分の気持ちに正直に、やりたいと思うことを諦めずに生きた。その姿は、現代の女性が見てもすごく共感できると思いますし、勇気をもらえると思います。
時代劇だからと気負わずに、“現代時代劇”を観るつもりで、少しタイムスリップした先の粋でカッコいい応為を楽しんでいただけたら嬉しいです。
『おーい、応為』
監督・脚本:大森立嗣
キャスト:長澤まさみ 髙橋海人 大谷亮平 篠井英介 奥野瑛太 寺島しのぶ 永瀬正敏
原作:飯島虚心 『葛飾北斎伝』(岩波文庫刊) 杉浦日向子 『百日紅』(筑摩書房刊)より「木瓜」「野分」
配給:東京テアトル、ヨアケ
©2025「おーい、応為」製作委員会
公開日:2025年10月17日(金)
https://oioui.com/
葛飾北斎の娘であり、弟子でもあったお栄。いつも北斎から「おーい、おーい」と呼ばれることから「葛飾応為」という号を授かり、女性絵師として活躍した女性の半生を、『日々是好日』(2018年)、『星の子』(2020年)の大森立嗣監督・脚本が映画化した。応為を時代劇映画初主演の長澤まさみが、北斎を名優・永瀬正敏が演じるほか、そうそうたる顔ぶれが鮮やかに色を重ねるように本作を紡ぎ上げている。
《STORY》
葛飾北斎の娘、お栄はある絵師のもとに嫁ぐが、かっこうばかりの夫の絵を見下したことで離縁となり、父のもとへと出戻る。やがて父親譲りの才能を発揮していくお栄は、北斎から「葛飾応為」という名を授かり、ひとりの浮世絵師として時代を駆け抜けていく。嫁ぎ先を飛び出してから20余年、師弟でもある北斎と応為父娘は、長屋の火事と押し寄せる飢饉をきっかけに、北斎が描き続ける境地“富士”へと向かうが──。

2025.10.17(金)
文=相澤洋美
写真=榎本麻美
ヘアメイク=スズキミナコ
スタイリスト=百々千晴