この記事の連載

 日本を代表する浮世絵師、葛飾北斎。その娘で、北斎の右腕として活躍した女性浮世絵師・葛飾応為(おうい)を長澤まさみさんが演じた。

 時代劇映画の主演は初めてという長澤さん。「知れば知るほど味わい深い人物で、実際に会ってみたい、見てみたいと思った」と話す応為を、どう演じたのか。

◆◆◆

――本作のオファーを受けて、どのようなお気持ちでしたか?

長澤まさみさん(以下、長澤) 葛飾北斎は、今も世界中に熱狂的なファンを持つ、日本を代表する浮世絵師です。でも、その北斎に「葛飾応為」という娘がいて、弟子でもあったということはそれほど知られていません。

 これまでに、応為を主人公にした漫画やドラマなども作られてはいましたが、私自身、応為についてそれほど深く知っていたわけではなかったので、こういう人がいたということに大変興味を惹かれました。

応為と北斎の親子関係に魅了された

――長澤さんにとって時代劇映画では初の主演となります。オファーを受けた決め手はどこにあったのでしょうか?

長澤 応為という女性に興味をそそられたことが大きいですが、脚本を読んで応為と北斎の親子関係に魅了され、演じてみたいと思いました。

 『MOTHER マザー』(2020年)でご一緒させていただいた大森監督と、また一緒に仕事がしたいという気持ちもありました。私にとって面白いチャレンジができるのではないかと思い、ぜひやらせてほしいとお答えしました。

――応為という女性をどのようにとらえましたか?

長澤 すごく男勝りで、大胆剛毅。いい意味で「男らしい」女性だと思いました。一方で、純粋で優しい。どう演じるのが応為らしいだろうと悩んでいた時に、監督から「長澤さんの素のままで」と言っていただきました。それを聞いて気持ちがすごく楽になって、“応為を演じる”というよりも、私が感じた応為をそのまま出せばいい、という意識で演じました。

2025.10.17(金)
文=相澤洋美
写真=榎本麻美
ヘアメイク=スズキミナコ
スタイリスト=百々千晴