他のアーティストへの楽曲提供で収めた成功
伊藤 最近になってから知ったことですがBLUE BIRD BEACHとWHITE JAMは同じライブハウスで活動していたんですよ。BLUE BIRD BEACHが先にデビューして、WHITE JAMはちょっとくすぶっていたんじゃないかな。その後、SHIROSEが他のアーティストに楽曲を提供するスタンスでどんどん開花していって、アーティストとしての表舞台ではなくて、裏方的な立場のソングライターとして成功することで、アーティストとしても成長したし、メジャーアーティストになるきっかけも勝ち取ったみたい。アメリカではブルーノ・マーズやメーガン・トレイナーがそうだったように、ソングライターからアーティストで成功するパターン。たぶん彼がこれからの日本のシンガーソングライターのモデルケースになっていくでしょうね。
山口 同感です。BLUE BIRD BEACHを「卒業」したJOYSTEPもソロ活動しながら、コーライティングで作曲活動にも取り組んでいますね。
伊藤 そうですね。僕もJOYSTEPとは良くコーライトしています。彼の場合は一度メジャーデビューしてから始めたことだけど、アーティストが他のアーティストに楽曲提供するのも当たり前になりましたね。しかも提供される側が話題性欲しさではなく、楽曲クオリティを求めてというのがポイントです。SHIROSEの場合は、ソングライターとしてうまくいき始めてからWHITE JAMも波にのってメジャーデビューしたんだと思う。2ndシングルの「夏なんて」を聴いたときは、ギスギスしてないじゃん! って思いました。やっぱ色んな意味で余裕ができたんでしょうね(笑)。
山口 今回の「咲かないで」も良い意味で「手練れ感」がありますね。クリエーターマインドを持って、アーティスト活動をするのは、視野が広がって良いのだと思います。
伊藤 ですね。去年の夏ぐらいに、今作でもプロデューサーとして参加しているヒロイズムとSHIROSEと3人で飯を食べました。想像していたより全然ちゃんとしたやつでした(笑)。ちゃんとしてるっていうのも変だけど、彼はアーティストとして尖っているところが目立っていたから、正直言うともう少し子供っぽいかなと。でも実際会ってみたら凄くクレバーだし人間としても魅力的、これからシンガーって枠に収まらず、色んなところで活躍しそうだなって思いましたね。
山口 そうですね。音楽シーンでは、アイドルと地下アイドルの境が曖昧になって、まあ僕はスタッフ体制などから、芸能界の内側のプロジェクトか、外部かということで明らかに区別がつくんですけれど、ライブハウスのファンにとっては同じですね。その曖昧に見える境界線を楽しむ気分もあるように思います。そんなアイドル全盛の時代に、音楽性と表現力で勝負しようとするシンガーは成功の道筋を描きづらい状況になっていますが、作家としての成功とパラレルにアーティスト活動するというパターンは、打開策になるでしょうね。僕らが推奨している「コーライティング」(外部サイト)を有効に使ってもらって、シンガーが成功していく姿をもっと見たいです。
伊藤 そうですね。
2016.02.14(日)
文=山口哲一、伊藤涼