ファンの女の子をステージに上げてハグ!

『ベテラン』では金と権力で汚れまくった御曹司テオを演じたが、本人は気さくなアニキキャラ。料理も得意だって。

 ブレイクのきっかけとなった2014年のテレビドラマ「密会」では、20歳年上の人妻(キム・ヒエ)に恋する純粋なピアニストを演じ、恋人にしたいナンバー1俳優となったと思ったら、リュ・スンワン監督の『ベテラン』では極悪非道な財閥御曹司役で、度肝を抜いた。さらに、『思悼(サド)』では王である父・英宗との確執の末、米びつに閉じ込められて死ぬという18世紀に実在した思悼世子を熱演。

 「どういう俳優として記憶されたいか」というファンからの質問には、「時代を振り返ったとき、あの俳優は面白かったな、笑えたな、と言われたい」と答えていたことから、これからも個性派として振り切れた演技を見せてくれそうだ。とは言え、「『密会』で演じた役が好きだったし、恋愛ドラマは繊細な感情表現が出来る。今度は、少しエロチックなものをやってみたい」と女性ファンを喜ばせる発言も忘れない。

左:10月6日が29歳(韓国では数え年のため30歳)の誕生日だったため、お祝いを。
右:個性的なプラカードを掲げる女子がたくさんいたが、この子が一番目立ってた!

 また、「私はオッパの地元、大邱(テグ)から来ました。オッパは大邱にはいつ来てくれますか?」というファンからの質問には、「俺が大邱に帰っても、君に会いに行くと思うのか?」と挑発したかと思うと、その子をステージに上げてハグをするという、見事なツンデレぶり。さらに3日後が誕生日だったため、バースデーケーキを自らの手でファン(アイデア賞もののプラカードを持参)に食べさせたりと、大サービスだった。

『思悼』でユ・アインと共演したソン・ガンホは、今年の開幕式で司会を務めた。

 このオープントークでのユ・アインは、いかにも頼れるアニキという感じだったが、実は同じ日の日中に行われた『思悼(サド)』の舞台挨拶では、ソン・ガンホに羽交い締めにされてじたばたしたり、無邪気な少年ぽさをアピール。演技だけじゃなく、このギャップにやられちゃうんだな、きっと。

 現在、韓国で放送中のドラマ「六龍が飛ぶ」も高視聴率を記録しているが、このドラマが終わり次第、おそらく兵役につくと思われるユ・アイン。そのせいもあって、女性ファンの絶叫はより切実だったのかもしれない。

石津文子 (いしづあやこ)
a.k.a. マダムアヤコ。映画評論家。足立区出身。洋画配給会社に勤務後、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。映画と旅と食を愛し、各地の映画祭を追いかける日々。ときおり作家の長嶋有氏と共にトークイベント『映画ホニャララ はみだし有とアヤ』を開催している。好きな監督は、クリント・イーストウッド、ジョニー・トー、ホン・サンス、ウェス・アンダーソンら。趣味は俳句。俳号は栗人。「もっと笑いを!」がモットー。

2015.12.29(火)
文・撮影=石津文子