「東のカンヌ」の座を固めたアジアを代表する映画祭

開幕作品は『モンガに散る』で知られる台湾のニウ・チェンザー監督の『軍中楽園』。1960年代の国民党軍慰安所を舞台にした人間ドラマで、台湾の人気スター、イーサン・ルアン主演。製作はホウ・シャオシェン。

 自称・映画祭追っかけ隊のマダムアヤコ。7月のプチョンに続いて、10月は今や韓国を代表するというより、アジアを代表する規模の映画祭となった釜山国際映画祭へ行ってきた(2014年10月2日から11日まで開催)。

 釜山は韓国第二の都市であり、日本からのアクセスもよく、映画祭には日本から多くのファンが参加しているので、読者の方にもなじみ深いかも。海辺のリゾート地で開かれるため、のんびりと観光気分も味わえる映画祭として、海外の映画人にも人気が高い。

 釜山には2004年から取材に行っているマダムは、今年で11回目の参加。10年前は、まだ手作りムードが残っていて、海雲台ビーチで酒盛りをしたりしていたものの、年々盛大になり、2011年には、センタムシティ(釜山のお台場的なエリア)に大規模な専用劇場“映画の殿堂”(Busan Cinema Center)を擁し、名実ともに東のカンヌの座をかためた。

左から、『軍中楽園』のイーサン・ルアン、ワン・チエン、ニウ・チェンザー監督、チェン・ジェンビン、アイビー・チェン。

 アジア映画のハブ(HUB。ネットワークの中心)を目指す映画祭でもあり、その象徴として、2012年からは開幕式の司会をアジアのスターと韓国の大物俳優がコンビでするようになった。2012年は『ラスト、コーション』で知られる中国の女優タン・ウェイと国民的男優アン・ソンギ、2013年は香港の人気スター、アーロン・クォックとベネチア国際映画祭などで数々の賞に輝く大女優カン・スヨンという組み合わせだった。

野外劇場の大スクリーンに映し出される、司会の渡辺謙とムン・ソリ。花火やプロジェクションマッピングなども駆使された、華やかなオープニングだった。

 第19回目となる今年は、渡辺謙とムン・ソリ(『オアシス』『自由が丘で』)という、日本と韓国のトップスターが開幕式の司会を英語と韓国語を交えて務めた。4000人以上の大観衆を前に、渡辺謙は登場した途端、「プサン、チェゴ!(釜山、最高)」と叫んで、かなり興奮気味。

2014.12.08(月)
文・撮影=石津文子