大役を務めた謙さんは相当あがっていた?

左:世界のケン・ワタナベも、大役に緊張していたのが見ていても伝わってきた。
右:ムン・ソリは、ホン・サンス監督の新作『自由が丘で』では加瀬亮と共演。

 渡辺謙夫人の南果歩の親族が釜山出身であることも、ムン・ソリから紹介されたり、さらには夏川りみが「さとうきび畑」を日本語で韓国古典楽器ヘグムの演奏にあわせて歌うなど、アジアの絆、特に日韓(韓国から見れば韓日)友好をアピール。まさか釜山の開幕式で「ざわわ」を聴くと思っていなかったので、驚かされた。戦争に引き裂かれる人々の悲しみを歌うこの歌は、会場を埋めた人々の心に染み渡っていたと思う。ちゃんと歌詞の字幕も出た。ちなみに夫人の南果歩によれば、謙さんは相当あがっていたようで、ムン・ソリが流暢な英語でフォローしていたのが印象的だった。

左:『私の男』の二階堂ふみと浅野忠信もレッドカーペットに登場。浅野さんはスケジュールの都合で、日本へトンボ帰りだった。
右:左から、『さよなら歌舞伎町』の南香歩、廣木隆一監督、イ・ウンウ。イ・ウンウはキム・ギドクの『メビウス』にも主演している韓国の実力派。

 レッドカーペットにも『私の男』の浅野忠信、二階堂ふみ、『さよなら歌舞伎町』の南果歩、『ザ・テノール/真実の物語』でユ・ジテと共に登場した伊勢谷友介、『真夜中の五分前』の三浦春馬ら、日本の映画人が多数登場。国同士の関係が最悪の状態と言われる今だからこそ、政治には利用されず文化交流と友好関係を深めていくという、釜山映画祭側の意思を強く感じさせるものだった。

 実際、映画祭を通じて私自身も韓国に多くの友人ができたが、開幕式後、みんなで同じ気持ちだということを確認しあった。当たり前だけど現地に行かないと、わからないこと、感じられないことってあるよね。

映画祭委員長と握手をする、『ザ・テノール/真実の物語』の伊勢谷友介とユ・ジテ。
『真夜中の五分前』チーム。左から、チャン・シャオチュアン、リウ・シーシー、三浦春馬、行定勲監督。リウ・シーシーのドレスは、アレキサンダー・マックイーン。

2014.12.08(月)
文・撮影=石津文子